研究実績の概要 |
本研究の目的は、透析患者における心血管・全死亡に、尿毒症物質であるインドキシル硫酸(IS)が関与しているのか、さらにその過程で、透析患者の予後予測因子であるfetuin-Aを介しているのか、を明らかにすることである。 fetuin-Aは生体内における石灰化抑制因子であり、透析患者でfetuin-A低値群では、血管石灰化が促進し、予後不良であることが知られている。そこで透析患者で蓄積するISが肝でのfetuin-A発現を抑制しているという仮説をたて、HepG2肝細胞を用いて検討した。ISはHepG2のfetuin-A発現を抑制し、その抑制にはダイオキシンの受容体として知られるAryl hydrocarbon receptor (AhR)を介していることを明らかにし、その成果を論文で発表した(Ochi A, Mori K et al., Nephrology, Dialysis, Transplantation 2015: 30: 1863-92)。 さらにヒトにおけるISとfetuin-Aの関係を検討するため、517名の血液透析患者(DREAM cohort)の保存血清を用い、ISとfetuin-Aの測定をおこなったが、IS濃度とfetuin-A濃度には有意な相関関係は認められなかった。 透析患者においてIS濃度とfetuin-A濃度の逆相関を認めなかった原因として、現在、fetuin-Aが腎不全における過剰なリン・カルシウム負荷に対して石灰化を防御するため形成するcalciprotein particle (CPP)の蓄積に着目している。すなわちfetuin-A濃度低下に伴い上昇する血中CPPがfetuin-A発現を調整(up-regulation)している可能性を検討中である。
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