研究課題/領域番号 |
25461253
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
武藤 重明 自治医科大学, 医学部, 教授 (40190855)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | claudin-2 / 腎近位尿細管 / タイトジャンクション / 傍細胞経路 / Na/Cl輸送 |
研究概要 |
平成25年度は、近位尿細管に発現しているclaudin-2の電解質輸送における役割をclaudin-2遺伝子欠損(KO)マウスとその野生型(WT)マウスを用いて検討した。 (1) KOマウスでは、近位尿細管傍細胞経路を介したNa/Cl再吸収障害は、尿中へのNa/Cl排泄量増加をもたらし、血圧低下を引き起こすことが予想された。しかし、KOマウスの尿中Na/Cl排泄率や血圧は、いずれもWTマウスと不変であった。一方、尾静脈より3種類の利尿薬(フロセミド、サイアザイド、アミロライド)を含む2%食塩液を投与し、2群で尿中Na排泄率を比較したところ、KOマウスではWTマウスに比べ有意な増加を認めた。以上より、KOマウスでは、近位尿細管傍細胞経路のNa/Cl再吸収障害を、フロセミド、サイアザイド、アミロライド感受性遠位側ネフロンからのNa/Cl再吸収増加によって代償していることが考えられた。 (2) 2群のマウス近位尿細管傍細胞経路のNaとClの透過性比(PNa/PCl)が、近位尿細管の長軸に沿って変化するかを以下の方法によって検討した。2群の腎より、近位尿細管を糸球体と連結したS1、中間のS2、ヘンレの細い下降脚と連結したS3の3つの分節に分け単離・灌流した。尿細管腔内外に50mMのNaCl濃度勾配を作成した時の拡散電位を測定し、PNa/PClを算出した。WTマウス近位尿細管のPNa/PClは、S1分節、S2分節、S3分節でそれぞれ1.3、1.1、0.78となり、近位尿細管の長軸に沿って不均一性が存在し、糸球体と連結したS1分節ではNa透過性がCl透過性に比べ優位であるのに対し、S3分節では選択透過性が逆転しCl透過性がNa透過性に比べ優位となることが明らかとなった.一方、KOマウス近位尿細管のPNa/PClは、S1分節、S2分節、S3分節でそれぞれ0.28、0.53、0.80となり、近位尿細管のいずれの分節でもCl透過性がNa透過性に比し優位で、長軸に沿ってCl透過性がNa透過性に対し緩徐に減弱することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
claudin欠損マウスを供給している神戸大動物センター飼育室で病原微生物が検出され、claudin欠損マウスの搬送ができなくなり、マウスを用いた実験が中断したことによる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)平成25年度に検討が不十分であった近位尿細管に発現しているclaudin-2の水・電解質輸送における役割を以下の方法で解明する。 (a)claudin-2遺伝子欠損(KO)マウスの近位尿細管傍細胞経路のNa/Cl再吸収障害を遠位側ネフロンからのNa/Cl再吸収増加によって代償していることを直接証明するため、上記マウスとその野生型マウスの腎組織ホモジネートを用いて、ヘンレの太い上行脚(TAL)管腔側膜に発現しているNa-K-2Cl共輸送体、遠位曲尿細管(DCT)管腔側膜に発現しているNa-Cl共輸送体、DCT/接合尿細管~髄質内層集合管(IMCD)管腔側膜に発現している上皮型Naチャネルα-サブユニットの蛋白発現量をWestern blot法にて比較する。2群のマウス腎よりTAL、DCT、IMCDを単離・灌流し、上記3つのNa輸送体活性を、管腔側にそれぞれフロセミド、サイアザイド、アミロライドを投与した時の経上皮電位と基底側膜電位の変化によって比較する。 (b)上記2群のマウス近位尿細管傍細胞経路のPNa/PClの近位尿細管内不均一性が、発現しているclaudinの組み合わせによることを証明するため、2群の腎臓をclaudin-2と-10の抗体を用いて染色するとともに、近位尿細管のS1分節とS3分節を50本単離し、claudin-2遺伝子と-10遺伝子のreal time PCRを行う。 (2)集合管に発現しているclaudin-4と-8の水・電解質輸送における役割を、claudin-4と-8遺伝子欠損(KO)マウスとそれらの野生型(WT)マウスを用いて、以下の方法で解明する。機能的解析では、1)metabolic balance studyと、2)単離・灌流した髄質内層集合管で経上皮抵抗や傍細胞経路の電気抵抗の測定を行う。形態的解析では、ヘマトキシリンーエオジン染色による光顕レベルでの形態的評価、claudin-4や-8に対する抗体、他のclaudinに対する抗体を用いた免疫組織染色、超薄切片法やフリーズフラクチャー法による集合管タイトジャンクションの電顕レベルでの形態的評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
claudin欠損マウスを供給している神戸大動物センター飼育室で病原微生物が検出され、claudin欠損マウスの搬送ができなくなり、マウスを用いた実験が中断したことによる。 次年度使用額は、受精卵を神戸大より頂き、自治医科大学動物センターでbreedingのために使用する予定である。
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