平成28年度は、主に近位尿細管のタイトジャンクションに発現しているclaudin-2の電解質輸送における役割を、claudin-2遺伝子欠損(KO)マウスとその野生型(WT)マウスを用いて検討した。2群のマウスの近位尿細管S1分節とS3分節を単離・灌流後、基底側にNaポンプ阻害薬ouabainを添加し、経細胞輸送をブロックした状態で、管腔側または基底側のNaCl濃度を減らし管腔内外にNaCl濃度勾配を形成した時の経上皮電位(Vt)を測定し、NaとClの透過性の比(PNa/PCl)を算出した。WTマウスS1分節のVtは、管腔側のNaCl濃度を減らすと正にシフトしたのに対し、基底側のNaCl濃度を減らすと負にシフトし、電位変化は同程度であった。WTマウスS3分節のVtは、管腔側のNaCl濃度を減らすと正又は負にシフトしたのに対し、基底側のNaCl濃度を減らすと負又は正にシフトし、電位の変化は同程度で、S1分節に比べ小さかった。KOマウスS1分節、S3分節のVtは、管腔側のNaCl濃度を減らすと負にシフトしたのに対し、基底側のNaCl濃度を減らすと正にシフトし、電位の変化は同程度であったが、S1分節の方が大きかった。また、管腔側のNaCl濃度を減少させた状態で、同部位にタイトジャンクションの陽イオンチャネル阻害薬protamineを添加すると、2群のマウスのS1分節、S3分節ではいずれもPNa/PCl比が添加前に比し低下した。以上より、1)WTマウスS1分節、KOマウスS1分節のタイトジャンクションは各々Na選択透過性、Cl選択透過性を有していること、2)WTマウスS3分節のタイトジャンクションはCl選択透過性を有していること、3)KOマウスS3分節のタイトジャンクションもCl選択透過性を有しているが、その程度はS1分節に比し小さいことが明らかになった。
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