研究課題/領域番号 |
25461254
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
横田 健一 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (50424156)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高血圧 |
研究実績の概要 |
CASZ1のfloxマウスを作成するにあたり、キメラマウスをメスの野生型マウスと交配し、生まれたマウスの遺伝子型を調べた結果、複数のマウスでgermline transmissionが確認できた。次にこのF1ヘテロマウスをFLPeトランスジェニックマウス、野生型マウスと順に交配させて、CASZ1 (f/+)マウスの作出に成功した。そしてCASZ1(f/+)マウス同士を交配させることで、CASZ1(f/f)マウスの作出にも成功した。 最終的に、遠位尿細管~集合管にCreを発現するKsp-1-Creトランスジェニックマウスとの交配も行うことで、尿細管特異的CASZ1ノックアウトマウス(以下cKOマウス)の作出に成功した。現在、8週齢になったcKOマウスをコントロール群とともに10匹づつ正常食、減塩食、高塩食で代謝ケージ内で10日間飼育し、毎日体重を測定し、飲水量および蓄尿にて尿量も測定しているところである。我々はこれまで細胞レベルでCASZ1の機能解析を進め、CASZ1はミネラルコルチコイド受容体MRの転写共役因子であり、ヒストン脱アセチル化(HDAC)活性を有する転写抑制性複合体Mi-2/NuRD複合体とMRの両者をbridgingするアダプターとして機能し、ヒストン脱アセチル化を介したエピゲノム制御によりMR標的遺伝子ENaCαやSGK1の発現を抑制することを明らかにしている。従って、cKOマウスでは、MRを介した転写活性が過剰となり、ナトリウムの再吸収が亢進し高血圧を呈することが推測される。このcKOマウスが実際に高血圧を呈することが示されれば、高血圧の発症にMR転写共役因子を介したエピゲノム制御が関与することを証明した世界で初めての報告となる。さらには、高血圧患者のCASZ1遺伝子のeSNP解析を行うことにより、遺伝的に規定される腎臓MR活性が予測でき、MR拮抗薬の早期介入のメリットのある患者像を明らかにできる可能性があり、高血圧症の新しいテーラーメイド治療を確立できると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで問題が生ずることなく順調に目的の尿細管特異的CASZ1ノックアウトマウスが多数誕生しており、予定している表現型解析にも移れることが明らかで、ほぼ当初の予定通り進行しているため。
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今後の研究の推進方策 |
尿細管特異的CASZ1ノックアウトマウスの表現型解析を行う。具体的には、正常食、減塩食、高塩食負荷やDOCA/salt負荷を行い、血液や蓄尿中の電解質や各種ホルモンを測定することで、生体でのCASZ1の高次機能を明らかにし、ひいては本態性高血圧症への関与を明らかにすることで、臨床応用としてMR拮抗薬の早期介入のメリットのある患者像を明らかにし、高血圧症の新しいテーラーメイド治療を確立したいと考えている。
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