研究課題/領域番号 |
25461258
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
森本 聡 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (80257534)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高血圧 / 交感神経活動 / レニン-アンジオテンシン系 / (プロ)レニン受容体 |
研究実績の概要 |
HTN-3試験においてカテーテルによるRDNを行った群では偽手術群に対する有意な降圧が見られなかったことが報告された(N Engl J Med, 2014)ためRDNの有効性機序に関する検討を行う研究の意義が疑問視されるようになった。しかし、高血圧の発症機序における脳内(P)RRを含むRA系が重要な役割を有する可能性は残る。そこで、テーマを修正して下記の研究を行なう方針とした。代表的な遺伝性高血圧モデルである高血圧自然発症ラット(SHR)は、脳内RA系の発現およびSNAの亢進が高血圧の原因の一つと考えられている。そこで、熟考の末本研究ではSHRにおける脳内(P)RRの役割について検討することとした。 実験1:脳内(P)RRの発現量 脳内の(P)RR mRNAおよび(P)RR蛋白の発現レベルを測定する。実験2:急性脳室内投与の影響 無麻酔・無拘束下に側脳室内に以下の薬剤を注入し、血圧、脈拍数、血管SNAを連続測定する。Ang II、プロレニン、ARB側脳室内投与後のプロレニン、HRP[(P)RR拮抗薬]側脳室内投与後のプロレニン。実験3:慢性脳室内投与の影響 4週間のHRPあるいはvehicleの持続脳室内投与中に血圧・脈拍・血管SNAを測定する。b) その後以下を測定する:水分摂取量・尿量、食塩嗜好、カテコラミン濃度、血中バソプレシン濃度、腎内カテコラミン濃度、脳内AngⅡ濃度・細胞内シグナル・酸化ストレス。なお、以上のデータをSHRとWKYで比較する。 進捗状況は以下の通りである。まだ検討されたn数は少ないが、以下の傾向があることを確認している。SHRの方がWKYに比し、1) 血圧が高値であり、水分摂取量が多く、食塩嗜好が高い。2) 脳内における(P)RR mRNAの発現量が多い。3) 脳内にAng IIあるいはプロレニンを注入した時の昇圧反応が大きい。また4) プロレニンによる昇圧はARBの前投与、HRPの前投与により阻害される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1) 腎除神経のための後神経根切断術が東京大学泌尿器科で見学し手術手技を学び、当科実験室で繰り返し行うことにより、成功例においては低下を示すことが確認された。しかし、多くのラットでは術後の活動性が著しく低下してしまうため、ラットに対する侵襲が無視できないぐらい大きいと考えられた。そのため、RDNの方法を、腎動脈周囲神経の物理的切断およびフェノール塗付による方法に切り替えることとし、香川大学薬理学教室において指導いただいたが、この過程において多くの労力がさかれた。 2) 本研究の実験を行う主力メンバーであった大学院生の竜崎正毅医師が事情により研究が続けられなくなった(最終的に2015年3月末で大学院を退学した)。このため、もう一人の大学院生 新山道大医師に実験手技を新たに習得してもらう必要が生じたため、その間の実験効率が著しく低下してしまった。 3) 研究実績の概要で記載した如く、カテーテルによる腎除神経術に関する臨床試験HTN-3試験において、RDNによる降圧効果が偽手術群に比べて有意ではない、ということが報告された。このためRDNの有効性に関して世界的な見直しが行われるようになったため、動向を見守る間研究方針を修正するかどうか検討することとした。研究テーマを大きく変えることなく、意義深い研究を行なうための研究テーマ探索のために時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
3年目の本年度は、未だ行えていない実験を継続して行う予定である。実験の効率を高めるために、研究代表者の研究グループの大学院生である新山道大医師に加えて、研究歴が長く実験に関する知識が豊富で、手技に長けている須田睦士研究助手にも協力を依頼して実験を行っていく方針である。
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