研究実績の概要 |
HTN-3試験においてカテーテルによる腎除神経術(RDN)を行った群では偽手術群に対する有意な降圧が見られなかったことが報告された(N Engl J Med, 2014)ためRDNの有効性機序に関する検討を行う研究の意義が疑問視されるようになった。しかし、高血圧の発症機序における脳内(P)RRを含むレニン-アンジオテンシン(RA)系が重要な役割を有する可能性は残る。代表的な遺伝性高血圧モデルである高血圧自然発症ラット(SHR)は、脳内RA系の発現および交感神経活動(SNA)の亢進が高血圧の原因の一つと考えられるが、すでに脳内における(P)RRの発現が正常血圧のWKYに比し亢進していることが報告されている。そこで、テーマを修正して、SHRにおける脳内(P)RRの役割について検討することとした。これまでに、SHRでは正常血圧のWKYに比べ、1) 血圧が高値で、水分摂取量が多く、食塩嗜好が高いこと、2) 脳内にアンジオテンシンIIあるいはプロレニンを注入した時の昇圧が大きいこと、3) プロレニンによる昇圧はアンジオテンシン受容体拮抗薬の前投与、(P)RR阻害薬の前投与により阻害されることが確認された。しかし、 a) 脳全体、およびb) (水電解質・SNA調節において重要な役割を担う) 視床下部全体、延髄全体、室傍核、視索上核、頭側延髄腹外側野の各領域において(P)RRの発現を検討しているが、これまでのところSHRにおける発現の亢進が確認できていない。そのため、現在再実験および高食塩負荷後における同様の検討を行っているところである。また同時に、(P)RR阻害薬の脳室内への慢性的持続投与による脳内酸化ストレス、血圧・脈拍、SNA、水分摂取量、食塩嗜好、血中バソプレシン濃度、腎内カテコラミン濃度の変化を検討することにより、脳内(P)RRの脳内酸化ストレス、バゾプレシン分泌、SNA、血圧、飲水行動、食塩嗜好に及ぼす影響を検討しているところである。
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