研究実績の概要 |
糸球体濾過量の非侵襲的かつ直接的な評価方法として、ADCを用いた手法を検討してきた。今年度は健常被験者の腎臓のADC計測を行い、臨床現場に近い環境での計測を実施した。b値を50, 100, 150, 200, 300, 500, 700 s/mm2として、脈波のピークから20 msと320 ms の2つのタイミングで測定を実施した。血管血流など速い流れを計測データから除くため、b値0 s/mm2を計測条件から省いた。50-200 s/mm2の低いb値を使って計算されるADC (aparent diffusion coeficinet: 見かけ上の拡散係数) は腎臓の灌流を強く反映すると考えられ、また200-700s/mm2の高いb値で計算されるADCは腎実質中の水分子の拡散や遅い動きを反映すると考えられる。
脈波ピークからのタイミングADCを比較すると、20msに比べて320mでは灌流を反映するADCが上昇する傾向が認められた。一方で、拡散を中心に反映すると考えられているADCは、脈波ピークから20msと320msのタイミングでは大きな変化が認められなかった。灌流を強く反映すると考えられる低いb値によるADCは動脈拍動による灌流を反映し、組織内の微細な流れを反映していると考えられた。
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