研究概要 |
当該研究は筋萎縮性側索硬化症(ALS; Amyotrophic lateral sclerosis)の発症機序解明のため、家族性ALSの原因遺伝子であるFUS/TLSの機能解析を行うものである。FUS/TLSは、核-細胞質シャトリングタンパク質であり通常は核内に局在するが、患者では細胞質に偏位し、凝集体を形成するため、このメカニズムの解明が重要である。当該研究では、(1)メチル化によるFUS/TLSの核-細胞質シャトリングの制御機構、(2)FUS/TLSによる凝集体の形成機序と意義 の解明を行っている。当該年度は、①TransportinとFUS/TLSの結合部位の同定、②各種メチル化阻害薬(AdOx,MTA, AMI-1)のFUS/TLS変異体P525L の細胞内局在への効果、③FUS/TLSのストレス顆粒形成を促進する各種ストレス(heat, oxidative, hypoxia, ER stress etc)の同定、④テトラサイクリン誘導性 FUS/TLS変異体発現系の作製のためのプラスミド構築 を行った。①に関しては、FUS/TLSのC端付近のRGG部位の欠損体を形成したところ、メチル化阻害薬の効果が消失したことからこの部位がTransportinとの結合部位であることが示唆された。②に関しては、汎メチル化阻害薬AdOx、MTAのFUS P525Lの細胞内局在への効果は顕著に認めたが、PRMT1特異的阻害薬であるAMI-1では効果は低レベルであった。③に関しては、ヒ素(Arsenite)、Sorbitolの投与時にFUS/TLSの著明なストレス顆粒形成を認めた。④に関しては、ドイツ(Dr.Dirk Grundemann、Cologne大学)よりテトラサイクリン誘導性発現系の構築用のプラスミド(pEBTet)を入手し、FUS/TLS変異体発現系のためのプラスミド構築を完了した。
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