当該研究は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症機序解明のため、家族性ALSの原因遺伝子の一つであるFUS/TLSの機能解析を行うものである。当該研究では、(1)アルギニンメチル化によるFUS/TLSの核-細胞質シャトリング機構の制御、(2)FUS/TLSによる凝集体の形成機序と意義の解明を重点的に解析し、ALS発症機序の解明を行う。当該年度は、(1)「アルギニンメチル化によるFUS/TLSの核-細胞質シャトリング機構の制御 」に関しては、アルギニンメチル化を阻害するメチル化阻害薬AdOx処理により、FUS/TLSのアルギニンメチル化を阻害することで、FUS/TLSの細胞質への偏倚と凝集体形成が抑制されることを解析し、その結果を論文として発表した( Neurochem Res. 2016 Apr;41(4):826-35.)。また、(2)「FUS/TLSによる凝集体の形成機序と意義」に関しては、今年度は新たに FUS/TLSと結合するRNA結合タンパク質を同定した。更に、FUS/TLSの凝集体が、本来は核内に局在するこのRNA結合タンパク質を細胞質に係留することを確認した。両者の結合は、mRNAの選択的スプライシング及び遺伝子発現に協働して機能することから、本結果は、FUS/TLS変異体による凝集体が他のRNA結合タンパク質を係留することで、選択的スプライシングや遺伝子発現を阻害することを示唆する。これは、昨年度に研究代表者が報告した結果(Biochem Biophys Res Commun. 2014 Sep 26;452(3):600-7)と合致するものであり、現在、論文投稿準備中である。
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