研究課題/領域番号 |
25461269
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山下 雄也 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (20431843)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | TDP-43 / 筋萎縮性側索硬化症 / calpain / RNA編集 / AMPA受容体 / ADAR2 / 神経細胞死 / FUS |
研究実績の概要 |
RNA編集酵素ADAR2の低下によるAMPA受容体サブユニットGluA2 Q/R部位のRNA編集低下、およびTDP-43病理は孤発性ALS運動ニューロンに見られる疾患特異的分子変化である。我々が開発した孤発性ALSの分子病態モデルであるAR2マウスでは、ADAR2の発現が低下した運動ニューロンにおいてTDP-43の局在異常が観察され、ALSにおけるTDP-43病理形成のメカニズムが、活性化されたカルパインによりTDP-43が凝集性の高い断片に切断されることが引き金になること、その断片が全長TDP-43をも巻き込んだ封入体を形成しTDP-43病理として観察されることを昨年までに報告した。AR2マウスの検討から、一旦形成された凝集体もカルパインにより非凝集性断片に細断されていくことが明らかになり、凝集体を形成したTDP-43はカルパインに耐性をもつことが想定される。封入体を形成するTDP-43は過剰にリン酸化されていることが報告されているため、リン酸化がTDP-43のカルパインによる切断に及ぼす影響について検討を行った。 TDP-43のリン酸化酵素であるカゼインキナーゼファミリーの4種を用いTDP-43をリン酸化後、カルパインへの耐性を調べた。数種のキナーゼによる検討から、リン酸化されたTDP-43がカルパインによる切断に耐性をもつことがわかった。TDP-43が凝集体を形成するにはどのようなカスケードにより変化が起こるのか、カルパインとTDP-43のN端フラグメントとTDP-43リン酸化の観点から検討を進めている。 ALSの病因と関連するFUSもカルパインにより切断されることをマウスの脳・脊髄で昨年度確認したので、培養細胞にFlag-FUSを過剰発現することにより、数種類のフラグメントができることを確認した。現在FUSのsiRNAを用いADAR2発現への影響を検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TDP-43をリン酸化することが報告されているキナーゼによって、TDP-43のリン酸化がカルパインによる切断を制御することを明らかにし、その結果の投稿準備を行っている。またFLAG-FUSを作成しin vitroにてカルパインによりFUSが数種のフラグメントに切断されることを示した。さらにFUSがADAR2の上流であることを検討するためFUSのsiRNAの検討を行ったがFUSの発現量を十分に低下させることができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
TDP-43のリン酸化がカルパインによる切断を制御することを明らかにした。TDP-43が凝集体を形成するにはどのようなカスケードにより変化が起こるのか、カルパインとTDP-43のN端フラグメントとTDP-43リン酸化の観点から検討を進める。FUSについてはFUS蛋白の発現量を十分に低下させるシステムを確立し、孤発性ALSに関与している遺伝子群がどのように関連して神経細胞死カスケードを引き起こすのか、更に検討を行いたいと考える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画に従って研究を進める。今回15,964円の次年度使用額が出た。消耗品の使用の細かい金額の端数が出たことによる。これに関しては、平成27年度研究費と合わせ、消耗品費として使用する。
|
次年度使用額の使用計画 |
今回の研究成果から、平成27年度の研究においても、当初の計画通りに研究を進める。予算執行に関しては、基本的に年度内での使用とする。計画通り、備品購入は行わず、物品費、旅費、人研費・謝金、その他の領域で使用する。
|