研究課題
1. 小脳失調の新たな定量評価法の開発:新規治療薬の臨床試験を成功させるためには,鋭敏で信頼性の高い小脳性運動失調の定量評価法の開発が欠かせない。申請者は,iPad端末で作動する検査プログラムを独自に開発し,小脳性運動失調の定量評価における有用性を検討した。本年度は,健常者10例,小脳失調症患者51例を対象に,臨床項目,臨床重症度SARA,重心動揺検査,Timed Up & Go Test (TUGT) および独自開発したiPad検査法の各データを取得し,解析した。その結果,本検査法は,従来の臨床重症度SARAと非常に強い正の相関を示すばかりでなく,簡便性,機動性,安定性,鋭敏性が極めて高いことを明らかにした。2. 脊髄小脳変性症に対する禁煙薬vareniclineの治療効果の検討:脊髄小脳変性症に対する新規治療薬として,禁煙薬 varenicline (Champix) の有効性および安全性を検討する臨床試験を開始した。試験のデザインは,低用量と高用量のクロスオーバー試験で,評価者盲検法により行った.対象は脊髄小脳変性症(SCA3,SCA6,SCA1,SCA2,SCA31,皮質小脳萎縮症)の成人患者で,試験薬を低用量0.5 mgまたは高用量 2 mg/日経口投与した。10週間の投与期間の後,2週間のwashout期間を経て,低用量と高用量をクロスオーバーした。評価法として,SARAの他に,iPad検査法を組み入れ,評価の安定性と鋭敏性を向上させた。本院の治験審査委員会IRBの承認を得て行い,患者同意書を取得して行った。平成27年3月31日時点で29例が試験に登録され,開始された。このうち5例は開始後2~8週までに強い嘔気のために試験を中止した。重篤な有害事象の発生は認めなかった.現在も試験が進行中であり,本年度に解析が終了する予定である。
3: やや遅れている
研究目的・研究計画で挙げた (1) ヒト剖検脳における重合体蓄積と神経変性との関連解析,および (2) 重合体形成阻害を分子標的とした新規治療薬の開発については概ね順調に進展している。(3) iPS細胞を用いた病態研究・創薬研究については患者皮膚繊維芽細胞からのiPS細胞樹立がうまくいかず遅れている。一方,候補薬の治療介入試験をスタートさせ現在進行中である。期間内に一定の評価が終了する予定である。
各研究計画は単年度での完了が見込めないため,平成27年度も継続して遂行する。
病理学的解析や細胞培養,生化学的解析に使用する試薬等の物品支出が低コストに抑えられたため,次年度使用額が発生した。
試薬等の物品費,研究成果発表の論文投稿料等に当てる。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
J Neurol Neurosurg Psychiatry
巻: - ページ: -
10.1136/jnnp-2013-307225.
Am J Hum Genet
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