研究課題/領域番号 |
25461274
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
日根野 晃代 信州大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (20596366)
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研究分担者 |
小柳 清光 信州大学, 医学部, 特任教授 (00134958)
中村 昭則 信州大学, 医学部附属病院, 教授(特定雇用) (10303471)
池田 修一 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (60135134)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / 神経難病 / 神経病理 / 遺伝子 |
研究実績の概要 |
SOD1遺伝子L106V変異を有する家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)家系にみられる下部尿路機能障害の発現時期,およびこれまで「排尿神経機構」として指摘されてきた各部位の病理学的所見を検討した.20例中10例で排尿障害がみられ,うち6例が蓄尿障害であり,5例は発症1年以内に発現し,人工呼吸器装着例では8例中6例が排尿障害を発現しており,うち3例は呼吸器装着とほぼ同時期あった.「排尿神経機構」では前頭葉,視床,視床下部,黒質,線条体,中脳水道灰白質,脊髄上行路,側索下行路,中間外側核,Onuf核で病理学的所見を認めた.下部尿路機能障害は他のSOD1遺伝子変異でもみられ,孤発性ALSでもまれではないと言われる所見であるが,本家系では発症後約1年と早期に発現するのが特徴であり,呼吸器装着時期とほぼ同時期に下部尿路機能障害を来す例が多くみられた.孤発性ALSでは呼吸器装着例で著明な自律神経障害が見られる例,呼吸器装着例で脊髄中間外側核の細胞脱落が強い,という報告があり,下部尿路機能障害と呼吸障害の関連性を検討する上で本家系の所見は重要であり,報告した(臨床神経. 56:69-76, 2016). また,孤発性ALSの自律神経障害評価のため,交感神経皮膚反応を行い,球麻痺型で病初期より低下することを見出し,現在論文執筆中である. さらにALS患者の血清,DNAを蓄積しており,バイオマーカー,新規原因遺伝子を検索中である.血清ではheat shock proteinを測定し論文印刷中である(Neurol Sci. in press). さらにALS患者の在宅サポートとしてICTを用いたチームケアシステムを開発し,大学,地域病院で使用し,患者の生活の質の改善のため,視線入力装置や人工呼吸器の遠隔監視,アラーム通報システムの確立を試みている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究室が耐震工事のため,遺伝子検査が行えない時期があり、滞りが生じた. 一方、臨床症状,交感神経皮膚反応の解析は終了しており,論文執筆中である.またバイオマーカーについても論文印刷中である.今後これらの病態解明に向け,病理での検索,遺伝子の検討を進める.
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今後の研究の推進方策 |
交感神経皮膚反応低下,heat shock proteinの発現の機序について,病理学的に検討する.剖検検体,血清,DNAは大学,難病診療センターを中心に県内関連病院から広く収集されており,これらを用いて検索を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年7月から平成28年5月まで、研究実施場所であった研究室の耐震工事のため,研究に滞りが生じたため.期間延長で研究を継続するために経費を繰り越した.
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次年度使用額の使用計画 |
遺伝子検査,病理学的検索を継続するため,試薬の購入がさらに必要であること,関連病院とのシステム共有,情報交換,検体輸送のための費用として使用する.
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