研究課題
基盤研究(C)
現在、家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)の治療において、ジフルニサルやタファミディスの経口投与の有効性が注目されている。ジフルニサル及びタファミディスは、血中のトランスサイレチンを安定化することにより、アミロイド線維の形成を抑制しているものと考えられているが、これらの薬剤のアミロイド線維形成抑制に対する分子機序は未だ不明である。今回、ジフルニサル投与後の患者の腹壁脂肪・胃沈着アミロイドを組織学的・生化学的に検索し、未治療患者、あるいは肝移植後の患者との比較により、ジフルニサル治療のアミロイド線維形成抑制に関する分子病態機序と、また沈着組織側での分子病態の変化を明らかにする。この研究成果は、肝移植治療にジフルニサルを併用することで、移植後FAP患者のアミロイド消失を促進し、一部の患者で問題となる心筋アミロイドの進展予防に応用できるものと考えられる。平成25年度は、肝移植後にジフルニサル投与患者の胃粘膜組織について、アミロイドの沈着量の推移と、沈着アミロイド構成成分の解析を行った。現在移植後ジフルニサル投与FAP患者2名について、肝移植後5-7年経過観察し、胃粘膜生検を経時的に施行しているが、どちらも明らかにアミロイド沈着量が減少している。アミロイド蛋白の解析では、生検時期によって、野生型TTRが優性であったり変異型TTRが優性であったりと一定したデータは得られていない。上記の結果は、移植後にジフルニサルを投与し、確実に野生型TTRの沈着を抑止している可能性を示している。また、沈着量が減少していることから、確実にアミロイド沈着機構を抑止できれば、アミロイド融解が促進される可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
現在、肝移植後FAP患者に対してジフルニサルを投与し、そのアミロイド発症抑制メアニズムについて、ほぼ計画通り検索遂行中である。
平成26年度は、肝移植未施行ジフルニサル投与患者の胃粘膜生検を解析し、さらに患者数を増やす予定。アミロイド線維を組織から抽出し、LC-MS/MSを用いて、アミロイド線維を構成する野生型TTRと変異型TTRの構成比を検出する。また、アミロイド融解機序の組織側因子の解析として、免疫ブロット解析による蛋白量の定量(細胞外マトリックスなど)を行い、対照群との比較検討を行う。
当初予定していた研究試薬が安価で購入できた為次年度使用額が生じた。26年度の経費と次年度使用額を含めた経費で、蛋白解析、RNA解析、免疫組織化学検索、質量解析に必要な消耗品などの購入費、学会参加費、通信費、印刷代に使用する予定。
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