研究課題/領域番号 |
25461278
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
飯島 正博 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座講師 (40437041)
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研究分担者 |
祖父江 元 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20148315)
川頭 祐一 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (40569779)
小池 春樹 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (80378174)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脱髄性ニューロパチー / 軸索障害 / 軸索-髄鞘相互作用 / TAG-1 / 実験的自己免疫性神経炎 |
研究概要 |
自己免疫機序による末梢神経の脱髄モデルとして、C57BL/6に対するmyelin protein zero(MPZ, P0)由来のペプチドによる実験的自己免疫性神経炎(experimental autoimmune neuritis, EAN)の系を作成した。今年度はこれを野生型ならびに軸索-髄鞘間相互作用にかかわるtransient axonal glycoprotein-1(TAG-1)をノックアウト(KO)したマウスに誘導し、両者の臨床病理学的な差異を解析した。 EAN誘導後2-4週間におけるclinical scoreとcage activityはTAG-1 KOで顕著な増悪を示した。さらにその後は野生型はEAN誘導前の運動機能に回復する一方、TAG-1の運動障害は緩徐に増悪を示した。またTAG-1 KOは後肢における筋萎縮が顕在化するとともに、体重減少が遷延する傾向が有意であった。病理学的にはsciatic nerveのトルイジンブルー染色ならびにときほぐし標本から、野生型における脱髄に加え、TAG-1 KOでは軸索障害の合併が認められた。 以上より、TAG-1の欠損が脱髄に伴う軸索障害を顕在化し、筋萎縮に反映される不可逆性の病態に関与することが判明した。これには脱髄後の再髄鞘化機転の障害による軸索脆弱性を示唆する結果と考えられる。ヒトの脱髄性ニューロパチーであるCIDPに対してもTAG-1の異常が軸索障害(筋萎縮・CMAP低下)との相関を報告した我々の報告と合致している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトの疾患であるCIDPにおいて、脱髄に伴う軸索障害によるIVIg治療反応性や予後への影響はすでに我々の報告するところである(Iijima M, et al. Neurology. 2009;73:1348-52)。今年度は同様の結果を動物モデルで再現できるかを目的としたが、当初の予定通りTAG-1の異常が臨床像や軸索障害に関与する結果を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
現在作成した系は単相性かつ進行の早い臨床像を呈することから、よりヒトのCIDPに近いとされる臨床像(緩徐進行性、慢性経過)と高度の障害をきたすモデル(B7-2 KO NODマウス)を導入し、その臨床病理学的特徴を解析する予定である。これが確認された後、現在保有するTAG-1 KOマウスとのdouble knockout系を作成し、これによる軸索障害の顕在化の有無を検証する。 これらと平行して、TGA-1 KO + EANモデルもしくはB7-2 KO NODに対してヒトで用いられる治療法を導入し、治療効果を検証する予定である。
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