研究課題/領域番号 |
25461281
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岡 素雅子 九州大学, 生体防御医学研究所, 特任助教 (80467894)
|
研究分担者 |
中別府 雄作 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (30180350)
康 東天 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80214716)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | アルツハイマー病 / インスリン抵抗性 / DNA酸化障害 |
研究実績の概要 |
ミトコンドリア転写因子tFAM発現がインスリンシグナル異常に及ぼす影響を検討することにより、アルツハイマー病の病態自身がミトコンドリア経路を介してインスリン抵抗性を誘起し神経変性を増悪させるメカニズムを明らかにする。アルツハイマー病モデルマウスとヒトTFAM発現マウスの交配により樹立した3xTg-AD/TFAM-Tg系統を用い、インスリンシグナル異常のメカニズムを明らかにする。 1.マウスの記憶、学習、行動解析:昨年度に引き続き、モーリス水迷路試験を用いた解析をマウス数を増やして行った。13ヶ月齢の3xTg-AD(hetero)マウスはコントロールのNon-Tgマウスと比較して短期記憶、学習獲得能力の低下を示すが、3xTg-ADマウスへのヒトTFAMの過剰発現により認知機能の著明な改善を認めた。 2.遺伝子発現解析:13ヶ月齢の3xTg-AD(hetero)及び3xTg-AD(hetero)/hTFAMTg(hetero)マウスの海馬における遺伝子発現の変化をMicroarrayを用いて解析した。有意な発現変化をみとめた遺伝子に注目して、免疫染色法を用いた蛋白レベルの確認を行った。 3.アルツハイマーモデル神経細胞に対するヒトTFAM蛋白投与の影響:ヒトiPS細胞由来のアルツハイマー病モデル神経細胞を用いて、アルツハイマー病患者脳の海馬において我々が報告したインスリンシグナルの異常を検討した。現在Microarrayを用いた遺伝子発現解析を行っている。 4.電子顕微鏡観察による神経細胞、神経軸索部位におけるミトコンドリア形態変化を観察し現在解析中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度までの計画に挙げていた、Microarrayによる遺伝子発現解析、電子顕微鏡を用いたミトコンドリア形態変化の解析が終了した。さらにヒトiPS細胞由来アルツハイマー病モデル神経細胞を用いて、アルツハイマー病患者脳において見いだしたインスリンシグナル異常を解析している。マウス及び、ヒト神経細胞の両方でMicroarrayを用いた遺伝子発現変化を比較検討している。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度はマウスを用いて 1.末梢性インスリん抵抗性の評価の追加:インスリン、グルコース負荷試験等を行う。 さらにこれまのの研究過程において、ヒトiPS細胞由来アルツハイマー病モデル神経細胞を用いる事が可能となった。このモデル細胞は本研究の目的である、アルツハイマー病病態におけるインスリンシグナル異常解析において有用であり、マウス実験の結果と比較解析が可能である。以上により 2. ヒトiPS細胞由来アルツハイマー病モデル神経細胞おけるヒトTFAM蛋白投与の影響:フラックスアナライザーを用いたミトコンドリア機能解析、電子顕微鏡を用いたミトコンドリア形態解析等 を追加予定している。 1.2をまとめ論文として報告する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
計画の過程において、ヒトiPS細胞由来アルツハイマー病モデル神経細胞を用いる事が可能となった。本研究の目的であるアルツハイマー病病態におけるインスリンシグナル異常のメカニズム解明に有用なモデルであり、マウス実験の結果を比較検討することが可能である。細胞を用いた検討を本年度より開始したため、マウス脳のMicroarray解析と電子顕微鏡を用いたミトコンドリア形態解析の一部を平成27年度に移行している。
|
次年度使用額の使用計画 |
1.3xTg-ADマウスを用いた末梢性インスリん抵抗性の評価の追加:インスリン、グルコース負荷試験 2.3xTg-ADおよび3xTg-AD/hTFAMTgマウス脳、ヒトiPS細胞由来アルツハイマー病モデル神経細胞における遺伝子発現変化をMicroarrayを用いた解析の継続 3. ヒトiPS細胞由来アルツハイマー病モデル神経細胞おけるヒトTFAM蛋白投与の影響:フラックスアナライザーを用いたミトコンドリア機能解析、電子顕微鏡を用いたミトコンドリア形態解析
|