研究課題/領域番号 |
25461282
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山崎 亮 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10467946)
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研究分担者 |
河野 祐治 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (20333479)
真崎 勝久 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90612903)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ミクログリア / 単球 / マクロファージ / 多発性硬化症 / 実験的自己免疫性脳脊髄炎 |
研究概要 |
本研究の目的は、神経炎症性疾患、とくに多発性硬化症の中枢神経炎症性病変において活性化しているマクロファージ・ミクログリアを、中枢ミクログリアと末梢マクロファージに区別し、それぞれの機能および疾患進行に及ぼす影響を解析しようとするもの。 われわれは、まず多発性硬化症モデルマウスである実験的自己免疫性多発脳脊髄炎(EAE)マウスの中枢神経の解析を計画した。マクロファージとミクログリアの区別は従来困難であったが、末梢由来単球(マクロファージ)を赤い蛍光蛋白で標識したCCR2RFPマウス、およびミクログリアを緑蛍光のGFPで標識したCX3CR1GFPマウスを掛け合わせて得られるCCR2RFP/CX3CR1GFPマウスを観察することで、これらの細胞を明確に区別することに成功した。このマウスにEAEを誘導すると、末梢血由来の単球がまず浸潤し、続いてミクログリアが活性化することが判明した。 平成25年度は、再発寛解型EAEを発症するSJLマウスにおいて、とくに再発病変ではこれらの細胞動態がどのようになっているのかを確認するため、まずSJLマウスをバックグラウンドとしたマウスの樹立を試みている。現在まで、SJLを背景に持つCCR2RFPマウスは第3世代まで交配が進んでいる。 SJLマウスにおけるEAEの誘導は成功した。病巣はC57BL6とは大きく異なり、病変の主座は脊髄でなく小脳に強く見られ、いわゆる古典的多発性硬化症と似た病理所見を呈していた。 来年度以降も、SJLマウスEAEの病巣における単球・ミクログリアの動態を解明すべく、継続的なEAE誘導、解析およびバッククロスを行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、SJLマウスとCCR2RFPマウスのバッククロス系樹立、およびSJLマウスにおけるEAEの誘導が主な研究目的であった。SJLマウスへのEAE誘導は成功した。C57BL6系CCR2RFPマウスのSJL系へのバッククロスは、SJL系マウスの出産数、および頻度ともに少ないので、当初の計画より遅れているため、現在breeding cageを増やして対処している。
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今後の研究の推進方策 |
1 急性期と再発期の単球/ミクログリア動態解析: MOG-EAEモデルをCX3CR1GFP/+/CCR2RFP/+マウスに誘導し、 急性期病変および再発(慢性)病変におけるRFP陽性単球とGFP陽性ミクログリアの分布を調査する。MOG-EAEモデ ルは慢性経過を辿りやすいので、初発のピークからスコアが低下(改善)し、かつ2以上を保っている慢性病変を 持つと思われるマウス腰髄を慢性期病変とし、初発から30日以上経過したサンプルを用いる。また、バッククロスが完了したCCR2RFP/+マウス(SJLバックグラウンド)にPLP-EAEを誘導し、SJLマウス急性期および 慢性期(再発期)の炎症細胞浸潤をMOG-EAEと比較する。また、本モデルに特徴的な小脳病変についても同様に比 較検討を行う。SJLマウスでは再発寛解がはっきりしているので、特に再発期の単球/ミクログリアの動態解析 はこちらのモデルが好適である。 2 慢性期/再発期の単球/ミクログリア発現遺伝子解析: MOG-EAEモデル急性期病変から採取した単球/ミクロ グリアは、それぞれ全く異なる遺伝子発現パターンを呈していた。本実験ではさらにそれを拡張し、CX3CR1GFP/ +/CCR2RFP/+マウスMOG-EAE慢性期、およびCCR2RFP/+マウス(SJL)PLP-EAE急性期、再発期の単球/ミクログリア発現遺伝子を解析し、比較検討する。成人EAEマウス脊髄からficoll濃度勾配を用いて単核球を抽 出(Cardona, 2006)し、セルソーターを用いてF4/80highCD45highRFP+単球とF4/80highCD45dimGFP+ミクログリア を採取。RNAアレイなどの生化学的実験に供する。 前述の通り、初回発症には単球の流入がキーファクターの一つになっており、その修飾は発症時期、重症度とも に改善することが判明している。実際のMS患者は再発期の患者がほとんどであるため、再発期に実際にミエリン 障害を行っている細胞が明らかになれば画期的な治療法につながる可能性がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進める。 当初の予定通り、マウス購入および飼育管理、試薬や抗体、器具の購入、出張旅費、論文発表費用(執筆、校正、投稿、印刷費用)に充当する。
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