研究課題
申請者らは、抗VGKC複合体抗体関連疾患において、7つの新規抗原(DCC,DPP10,TMEN132A, GABAAR,ADAM23等)を同定した。さらに、LGI-1自己抗体がLGI-1とその受容体であるADAM22との結合を阻害することにより、脳内の興奮性シナプス伝達の大部分を担うAMPA受容体機能を低下させることを明らかにした。また自己免疫性辺縁系脳炎でGABAA受容体に対する自己抗体を持つ一群を報告した。その臨床的特徴は、浸潤性胸腺腫を合併し、免疫療法に反応しがたく、言語性記憶障害が残存しやすいというものであった。血清学的には、GABAA受容体β3サブユニットの細胞外エピトープが標的となり、抗体の結合により、シナプス上の受容体の減少が起こり、選択的に抑制性シナプス後電流を減少させることを明らかにした。別の疫学的研究の結果を踏まえ、Isaacs症候群(IS)の診断基準を作成し、ISの難病指定に寄与したが、抗VGKC複合体抗体の陽性率は約30%であり、IS症状出現時に未知の抗原に対する自己抗体の存在が示唆されている。次の研究課題ではISの新たな病態マーカーの確立し、免疫介在性チャネル疾患の病態メカニズムを明らかにする。チャネル蛋白に加え、チャネルと複合体を形成する蛋白抗原に着目した。候補遺伝子を一つずつCell Based Assayで検討するのだけではなく、一例ずつことなる複数の抗原について網羅的に解析する。この方法は効率が良いだけではなく、未知の新規抗原を同定することが出来る。一自己抗体→一疾患という今までの単純なパラダイムではなく、症例毎に、自己抗体の組み合わせやその量比による症状に差異を解析することが出来る。先行研究で確立した解析方法を海馬神経細胞から後根神経節細胞へと転換することで研究を発展させる。
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