研究課題
基盤研究(C)
近年、免疫性疾患の病態形成における“CD4+ ヘルパーT細胞の分化異常”の重要性が注目されている。HTLV-1関連脊髄症(HAM)は、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)感染者の一部に発症する脊髄の慢性炎症性疾患であり、我々は最近、HAM患者の髄液と脊髄組織において、ウイルスの作用によって分化異常を来したと考えられる新規の病原性CD4+ ヘルパーT細胞(CCR4+CXCR3+ CD4+ T細胞)を発見した。この研究では、本細胞に着目して解析を進めその特性を明らかにし、本細胞に基づくHAMの診断や治療応用へと展開するための研究基盤の確立を目的とする。平成25年度は、まず本細胞の炎症惹起性について検討した。本細胞の産生サイトカインプロファイルの解析により、IFN-γの自発的な過剰産生能を有していることを明らかにした。次に、HAM患者脊髄病変におけるIFN-γ産生性の本細胞の存在を証明。また、本細胞からのIFN-γ産生刺激による脊髄astrocyteからのCXCL10(CXCR3リガンド)過剰産生誘発と、それによるCXCR3+ T細胞の遊走が、HAMの脊髄における炎症慢性化機構の主軸となっていることを証明し、論文発表した(Brain, 2013)。また、HAM患者髄液由来の本細胞の、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法によるHTLV-1感染率、病変部における占拠率、増殖能、T細胞分化関連転写因子の発現、等の解析を進め、論文投稿を完了した。この特異な細胞の解析は、HAMの免疫病態を明らかにするだけでなく、様々な免疫性疾患の病態理解に繋がると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本細胞の特性を解析することにより、これまで不明であったHAMにおける炎症慢性化機構を明らかとし、新規の治療薬に結びつく成果をまとめ、国際的な一流雑誌に掲載された(Brain, 2013)。また、本細胞の発生機構や病変部における占拠率等を明らかにして論文化し投稿を完了しており、研究活動はおおむね順調に進展していると考える。
同一HAM患者から、髄液CCR4+CXCR3+ CD4+ T細胞、末梢血CCR4+ CD4+ T細胞、末梢血CXCR3+ CD4+ T細胞をFACS sortingで分離して、それぞれの遺伝子発現をマイクロアレイで比較解析する(複数例で実施)。この解析で、本細胞に特徴的な細胞表面発現分子や特徴的な細胞内シグナルを明らかにすることが可能となり、それは将来の新規な治療応用への発展や、本細胞の新たな発生機構解明に役立つ基盤情報の獲得に結びつく。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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