研究課題
基盤研究(C)
FAD変異及びα-シヌクレイン変異を発現する培養細胞系を用いて、細胞生物学的にこれら変異が脂質ラフト構造・大きさ・機能に及ぼす影響を細胞生物学的、生化学的に検討した。以下、その詳細を述べる。1)同上変異を発現する神経芽細胞腫のSH-SY5Yから、型の如く脂質ラフトフラクションを蔗糖密度勾配超遠心法を用い調整した。又、mock-transfected SH-SY5Y細胞からも同様に調整し、同分画中に存在する蛋白、脂質類の相違を詳しく検討した。また、同分画に存在するTrk-tyrosine kinase, Lyn, Fyn及びβ-glucosidase( β-Glu)、neutral sphyngomyelinase(nSMase)については特に各々の特異的抗体を用いてその量比に対照と差異があるか否かを検討した。また、後2者についてはそれらの酵素活性測定も行った。その結果、TrkやLynは変異細胞ではそれら含量が低下していた。また、ライソソーム水解酵素活性にも異常を確認した。これらの異常がどのように細胞障害に結びつくかその機序の検討を開始した。2)我々は本研究遂行中に新たに見出した脳脊髄根末梢神経炎患者(EMRN)が共通して急性・亜急性の経過で認知症様症状を呈してくることに着目し、同患者達の血清・髄液で中性糖脂質に対する抗体の存否をスクリーニングした。その結果、同患者達に特異的にlactosylceramide、glucosylceramideなどに対する抗体が存在することを見出し、報告した(Neurology, 2014)。興味深いことに本抗体は、上記1)で明らかにした中性糖脂質異常の標的となる脂質であり、EMRNではアルツハイマ‐病と同様な異常が存在している可能性を示唆していると考え、抗中性糖脂質抗体がα-シヌクレインやγ-セクレターゼの動態に如何なる影響を与えるのか検討を開始した。
3: やや遅れている
使用している細胞でのトラブルがあったため、予定よりやや遅れている。また、AD患者脳での脂質分析やタンパクの解析も開始した所であり、予定よりやや遅れている。
認知症患者試料を用いて前年度と同様の実験を行い、培養 細胞系からのデータと比較する。また、一部ADのモデルマウスを利用して中性糖脂質外因的投与、あるいはGlcT-1遺伝子のknock-inマウスを作製し、その表現型を確認する。
前記したように、使用している細胞の不調があったため、一時期実験が足踏状態となり、細胞のレスキューに時間がかかった。そのため、解析のため使用予定であった試薬、抗体等の使用が遅れてしまったため。現在、細胞は使用できる状態に回復をしたため前年度計画されていた実験、解析を精力的に行う予定です。
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