研究課題
前年度までの研究活動から、変異presenilin 1(PS1)の発現により、SH-SY5Y細胞や変異PS1を発現するトランスジェニックマウス脳では中性糖脂質のglucosylceramide (GlcCer)が著減し、同細胞の発現する中性・酸性糖脂質組成が大きく変化する事を確認した.昨年度はさらに、培養SH-SY5Y細胞からmenbrane rafts(rafts)を調整してその脂質組成や蛋白組成の異常の有無を検討した.その結果、一昨年度に確認した脂質異常がrafts fractionでもやはり存在していることを確認した.こうしたraftsを構成する脂質組成の異常は、同部位に局在する蛋白の機能にも大きな影響を与える可能性があり、PDで問題となるa-synucleinやTrk神経栄養因子受容体、neutral sphingomyelinase (nSMase)の機能を野生型から調整したそれらと比較検討する実験を開始した.Trkは変異PS1のrafts中ではリガンドであるnerve growth factor (NGF)に対してその反応性が顕著に低下している事実を見出し現在論文投稿準備中である.本年度は続けて他の蛋白分子機能に及ぼす影響を解明予定である.更に、一昨年度より解明に取り掛かった中性糖脂質に対する抗体を呈し認知症などの中枢神経症状を呈する脳脊髄根末梢神経炎(EMRN)患者血清・髄液を用いてこれら抗体がrafts機能におよぼす影響をPS1活性やnSMase活性測定から明らかにする実験を開始した.本年度は必要な再実験を繰り返し統計学的評価を実施する予定である.さらに、これら抗体が細胞およびrafts中の脂質組成に及ぼす影響も細胞内全脂質を[3H]-palmitic acidでlabelし、その全容を解明する予定である.ヒト患者脳での実態解明も実行し、本研究を終了予定.
4: 遅れている
昨年度の細胞培養系でのトラブル及び使用する糖脂質の精製や上記実験で使用する抗体の中で質の良いものを探すのに手間取ったこと、急遽実験補助員が退職した事などにより、計画していたスケジュールより遅れている
遅れている認知症患者試料を用いた実際のヒトサンプルでの解析を精力的に行うため、培養細胞系からの知見を早急にまとめ、その結果をヒトサンプルでの結果と比較対照してその異常を明らかにする.現在当研究室には、認知症(AD)患者剖検脳、髄液、血清が既に凍結保存されており、ヒトでの検討にスムーズに入れる予定です.さらに、DLB患者やEMRN患者試料も既に所有しているので、各々の疾患における特異性を検討したい.患者試料解析には、新たに獲得した実験補助員の補助が大きな推進力となると考えている.
研究補助員が家庭事情で急に退職し、予定した実験が遅れたため予算執行が出来なかった.本年度はようやく確保が可能となったため本来の研究計画を集中的に実施する事が可能と考えている.
研究補助員を確保でき、また使用にたり得る各種抗体が同定出来たため本年度はこれら抗体を順次購入する.さらに、脂質抽出の為の試薬、器具も買い替えが必要でその費用の執行も行う予定である.
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