研究課題
前年度までに 患者および対照由来のiPS細胞を神経幹細胞さらに神経細胞へ分化誘導を行った。細胞内にALSの病理標本でみられるユビキチン陽性の凝集体などが形成されるかを免疫染色で検討した結果、p62の凝集が、ALS患者由来細胞のみにみられた。今年度は、さらに、凝集を他のALSに関連する蛋白に対する抗体で染色したが、残念ながら、p62と同様オートファジーとプロテアゾームに関連するALS原因蛋白Ubiquilin2は共局在していなかった。p62凝集をマーカーとして、オートファジーや酸化ストレスの改善薬により、凝集の形成抑制が可能かを検討した。その結果、オートファジーの促進薬である薬剤Xや抗酸化作用を有する薬剤Yを培養液に添加することで、p62の凝集は減少した。それらの薬剤の毒性については、少なくとも細胞の形態などへの影響は無いようであった。また、これまで予備実験で一部患者ではiPS細胞を確立していたが、本研究ではALSや認知症は種々の異なる原因で生じている孤発性疾患も対象としており、できるだけ多くの患者のiPS細胞を樹立し、数種のiPS細胞で確認された知見を他のiPS細胞で確認する作業が必要であると考えられた。このため、引き続き、皮膚切開を伴う処置・検査をうける患者を対象に皮膚の採取と線維芽細胞の樹立を試み、7例の樹立をおこなうことができた。現在iPS細胞を作製中である。
2: おおむね順調に進展している
患者iPS細胞の樹立から、神経細胞への誘導、さらに試験的な治療まで進んでいるので、概ね順調であると考えられる。
様々なオートファジーの促進剤(amiodarone, perhexiline, rottlerin, niclosamide,valproate, minoxidil)などを用いて、神経突起伸展や細胞生存率への影響や凝集体の変化を検討する。また、飢餓(低栄養)という最も普遍的なオートファジーの賦活法も試す。反対に、プロテアソーム阻害剤(lactacystin, MG132)やオートファジーの阻害剤(chloroquine)で、促進効果の逆が生じるかを確認する。また、抗酸化剤がp62凝集抑制効果のあることを本研究で明らかにしたので、様々な抗酸化物質について凝集抑制効果が出現するか、あるいはその逆に酸化促進剤が凝集促進を行うかを検証し、オートファジー促進剤との併用によりその抑制効果が促進されるかも検討する。p62と同様に認知症とALSの原因蛋白であるVCPやこの蛋白およびp62自身が関与するNF-kB経路は酸化ストレスへの関与が指摘されているがそういったカスケード上の蛋白発現・局在について免疫染色を用いて観察する。
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