研究課題
FUS/TLSはRNA/DNA結合タンパク質であり、その遺伝子変異は筋萎縮性側索硬化症の原因となる。また、FUS/TLSを含む細胞内封入体はポリグルタミン病や前頭側頭型認知症の一部で見つかっているが、これらの疾患の発症機構との関わりは不明である。FUS/TLSのN末端領域はプリオン様領域の一つであり、この領域の凝集性の特質が、RNAプロセシングなどに関する生理機能と、疾患において封入体に局在する病理学的異常の両者を媒介すると考えられる。本研究では、前年度においてFUS/TLS欠損マウスの解析を行い、その個体レベルでの変化を報告した。本年度は、これまでに得られたノックアウトマウスのマイクロアレイ解析の結果から、FUS/TLSによるスプライシング制御の標的遺伝子として代表的と考えられる候補をピックアップした。これらの候補遺伝子に関して、実際にFUS/TLSによる制御が行われるかを培養細胞レベルで解析を行った。これまで試した候補遺伝子は、FUS/TLSだけでなく、そのパラログであるEWSおよびTAF15による冗長な制御を受けることが分かった。また、EWSおよびTAF15自体の発現量も、FUS/TLSの機能低下によって上昇することも見出した。現在、これら3者を単独、あるいは同時に発現低下させる実験系を構築し、RNAプロセシング制御の詳細を検討している。また、FUS/TLSがポリグルタミン病の封入体に存在することから、このタンパク質が病態制御因子として機能するかを、ハンチントン病モデルマウスにFUS/TLSのヘテロ欠損を導入することで検討している。
3: やや遅れている
教育業務が一時的に増大し、そのため、研究に割ける時間が予定よりも大幅に少なくなった。また、投稿した論文が査読に回るまでに予想外に時間がかかり、それに対処するための実験の開始が遅れた。
現在、以下の2点を解析中である。①FUS/TLSの機能低下が神経変性疾患に与える影響をマウスモデルを用いて検討している(投稿中)。②FUS/TLSの標的RNAのうち、その効果が強いと思われるものに関して、FUS/TLSによる制御の詳細と生理的な意義の検討を行っている。これらの研究を論文として発表したい。
卒業論文および修士論文指導などの教育業務の負担が一時的に増大し、研究に当てる時間が予定よりも大幅に減ったため。また、投稿中の論文が査読に回るまでに時間を要したため、そのコメントに対処するための実験を開始できなかったため。
現在、投稿した論文については、査読結果を得ており、査読コメントに対処するための実験・解析を行う予定である。また、FUS/TLSの機能解析に関する論文の作成のため、引き続き実験を行う。これらの研究に残額を使用する。
すべて 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Acta Neuropathologica Communications
巻: 3 ページ: 1-12
10.1186/s40478-015-0202-6