研究課題
最終年度はFUS/TLSがポリグルタミン病の病態修飾因子として作用するかを検証した。ポリグルタミン病の一つであるハンチントン病では、疾患原因タンパク質ハンチンチンが集積した封入体の中にFUS/TLSも検出されるが、その存在意義は不明である。FUS/TLS欠損マウスを2種のポリグルタミン病、ハンチントン病(HD)と球脊髄性筋萎縮症(SBMA)のモデルマウスと交配し、両疾患におけるFUS/TLSヘテロ欠損の影響を検証した。SBMAモデルマウスではFUS/TLSのヘテロ欠損による表現型の変化が見られなかったが、HDモデルマウスの場合は運動機能異常がより早期に確認され、寿命の短縮が見られた。従って、FUS/TLSの量がHDの律速因子となることが示唆された。HDモデルマウスでは線条体および大脳皮質でFUS/TLSが変異型ハンチンチンの凝集体に取り込まれ、非凝集画分のFUS/TLS量が低下していたが、これがFUS/TLSのヘテロ欠損によりさらに低下していた。即ち、機能的なFUS/TLSの量が低下したと考えられる。一方、SBMAの病変部位である脊髄では変異型アンドロゲン受容体との共凝集が見られなかった。以上より、FUS/TLSとポリグルタミンとの共凝集の程度や残存するFUS/TLS機能の程度、病変部位によって、ポリグルタミン病におけるFUS/TLSの寄与が異なる可能性が考えられた。以上の内容も合わせて、本研究課題では神経変性疾患関連タンパク質であるFUS/TLSの機能欠損の影響を動物個体レベルで明らかにすることができた。即ち、FUS/TLS自体の機能欠損は動物行動と海馬における形態的な異常を示すが、筋委縮性側索硬化症(ALS)様の症状は示さなかった。一方、上述のように、FUS/TLSは他の遺伝子の変異を原因とする疾患においても、共凝集依存的に病態修飾因子として影響し得ることが分かった。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 35236
10.1038/srep35236