研究課題/領域番号 |
25461302
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
長野 清一 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所疾病研究第五部, 室長 (40362727)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | TDP-43 / mRNA / 神経突起輸送 / 筋萎縮性側索硬化症 / 前頭側頭葉変性症 |
研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭葉変性症(FTLD-U)ではRNA結合蛋白質であるTDP-43の細胞質への沈着がみられる。我々はTDP-43が持つ神経突起へのmRNA輸送機能がその沈着により障害され、特定のmRNAの供給不足を通じて同疾患を発症すると考え、神経細胞区画培養法を用いてTDP-43の輸送標的としてリボソーム蛋白質(Rp)mRNAを同定した。この知見をもとに本年度は①TDP-43によるRp mRNAの神経突起への輸送機構の解析、および②TDP-43の機能低下による局所翻訳機能障害と神経変性機構の解析、を行った。①についてはマウス大脳皮質神経細胞においてRp mRNAが神経突起内でTDP-43と共局在して移動すること、TDP-43の発現低下により神経突起内のRp mRNAが減少することを見出した。非翻訳領域の欠失によりRp mRNAのTDP-43との結合は減少するとともにその神経突起内での量も減少し、Rp mRNAの神経突起内への輸送にTDP-43が重要な役割を果たしていることが推測された。②についてはTDP-43の発現低下によりマウス大脳皮質神経細胞の神経突起伸長が阻害されるとともに細胞死が生じることが確認された。その際神経突起でのRp蛋白質量の減少がみられるとともに局所蛋白質合成能の低下がみられ、神経突起におけるリボソームの機能障害が起こっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Rp mRNAが非翻訳領域を介してTDP-43と結合し神経突起へ輸送されていることが明らかにされるとともに、TDP-43の発現低下に伴って神経突起でのRp mRNAの供給不足によるリボソーム機能の障害が生じることが見出され、本研究の目的であるTDP-43による神経突起への輸送標的としてのRp mRNAの生理的意義をほぼ順調に示すことができていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度にマウス大脳皮質神経培養細胞を用いて示したRp mRNAのTDP-43による神経突起への輸送につき、その分子機構および神経突起での局所蛋白質合成機能への影響および神経細胞機能との関連につき、今後さらに詳細な解析を進める。合わせてすでに入手している神経細胞特異的TDP-43欠損マウスを用いて神経突起でのRp mRNAの輸送と機能につき、in vivoでも同様にみられるかを検証する方針である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の実験が当初予定よりもやや少ない量の試薬で遂行できたため。 次年度に用いる試薬の必要量の増大が見込まれるため、次年度の物品費に組み入れる予定である。
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