研究課題
今回の研究計画では日本における自己免疫性自律神経節障害(AAG)の臨床像を明らかにするために抗自律神経節アセチルコリン受容体(gAChR)抗体の検出系を樹立し,自律神経障害をきたした症例からの血清において抗gAChR抗体を測定していくという方針であった.そして本抗体陽性症例の臨床像を把握することを目的とした.われわれはルシフェラーゼ免疫沈降システム(LIPS)による抗gAChR抗体検出系を樹立し,既製の抗体を用いて用量反応性を検証し,健常対照,疾患対照,そしてAAGが疑われる症例での測定を行った.健常対照平均の+3SDをカットオフに設定し,測定を行ったところ,AAGでは48%の陽性率であった.この結果は2015年にPLoS ONEに報告した.また臨床像の解析としては1)発症様式として慢性経過症例が約半分を占めること,2)広範な自律神経障害を呈すること,3)自律神経外症状としては脳症状や内分泌障害を呈しうること,4)膠原病の合併や腫瘍の併存症例が存在すること,を記した.またシェーグレン症候群(SS)における自律神経障害に関する調査として,SS症例における本抗体の測定を行った.自律神経障害の有無について不明のSS症例群では23%陽性という結果であり,全国より集積した自律神経障害のあるSS症例10例では8例の抗体陽性を認めた.このようにSSでは末梢レベルの障害の新たなメカニズムとして本抗体の関与が示唆された.研究結果は2016年にMod Rheumatolに掲載された.その他,小児で自律神経障害および脳症症例に関する報告,複合的免疫治療が有効であったAAG症例に関する報告を測定依頼者とともに行った.自律神経障害を呈しうる免疫異常が介在する疾患では本抗体の出現する可能性があり,その病態や症状の成り立ちに関与しているのではないかと推測している.無論,抗体の病原性については今後,詳細かつ慎重な基礎的な裏付けが必要であり.それについても計画している.
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