研究課題/領域番号 |
25461307
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
朝比奈 正人 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (40301098)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | レビー小体型認知症 / アルツハイマー病 / 胃電図 / 自律神経 |
研究実績の概要 |
胃平滑筋は胃上弯部に存在するペースメーカーの電気活動により3回/分程度の周期で収縮する.我々はパーキンソン病では胃ペースメーカーリズムが不整であることをすでに明らかにしており,同じスペクトラムにあるレビー小体型認知症(DLB)においても同様の胃電図異常を呈すると予想した.一方,我々はアルツハイマー病(AD)では胃電図に異常がないと推測し,ADとDLBの鑑別に胃電図が有用であると予想した. DLB7例(平均年齢79.7±4.72歳),AD15例(平均年齢75.5±6.73歳),健常対照者16例(平均年齢69.7±8.10歳)において胃電図検査を行なった.胃電計(胃電計EG,ニプロ社)を使用し,床上安静の状態で空腹時の胃電図を30分間空記録した.得られたデータを周波数解析し,主要周波数(DF;パワースペクトラムの最大周波数,胃ペースメーカー周期を反映),DF変動係数(ICDF:ペースメーカーの変動を反映),全積算パワーに対する徐波,正常波,速波成分のパワー比率を算出し,DLB群とAD群と健常群とで比較した.3群平均値の比較にはクラリス・ウォリスのH統計量を用いた. 現波形に関しては,健常者全例で3回/分程度の周期的な胃電気活動(slow wave)がみられたが,DLB5例では波形が不整であった.DFはDLB群(2.78±0.36回/分),AD群(3.07±0.33回/分),健常群(3.09±0.24回/分)の3群間で有意差はなかった.DLB群のICDF(11.4±8.36%)はAD群(3.28±2.34%),健常群(2.04±1.41%)と比べ高く,3群間での有意差はp=0.05であった. 徐波,正常波,速波成分比率は3群間で有意差を認めなかった.この結果は胃電図の指標のうちICDFがADとDLBの鑑別に役立つ可能性を示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H25年度の症例数は予定よりかなり少なかったが,H26年度は患者リクルートに力を入れ,予定以上の速度で症例数を増やすことができた。これにより,アルツハイマー病患者15例,健常者16例となり計画した症例数(各群20例)に概ね達したが,レビー小体型認知症の症例数は7例とまだ少ない状態である。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度の症例の集まり方であれば,今年度前半中に予定の症例数に達することが可能と考えている。胃電図の解析方法は既に確立しており,症例数に達し次第,解析を行い,その結果を国際学会に発表し,平行して英文論文を作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会参加の旅費の金額が予定より抑えられたため。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究のための情報収集・議論のために参加する国内学会の費用に充てる予定である。
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