研究実績の概要 |
本研究では時間処理能力の異常を神経疾患、特に大脳基底核の機能異常を認めるパーキンソン病(PD)、小脳機能の異常を認める小脳疾患患者で検討した。とりわけ時間の長さにより情報処理が異なるかを検討した。用いた課題は①異なる長さの音(S1,S2)を2つ聞かせ、その後にどちらの音が長いか判断させる課題(時間認知課題)、②ある長さの音を聞かせた後、同じ長さの時間を再生させる(同じ時間だけボタンを押す)課題(時間再生課題)、③ある一定の間隔(ISI)で鳴る音にあわせてPCのキーボードをタッピングさせる課題(同期タッピング課題)の三つである。①S1音の長さを一定とし(700、2100、3500ms)、S2の長さを様々に変えた(400-4000ms)。健常人20名では短いS1では、S1より短いS2の値で正答率が最も低く(時間の過小評価)、逆に長いS1ではS1より長いS2の値で正答率が最も低くなった(時間の過大評価)。年齢をマッチしたPD患者16名でも同様の傾向を認めたが、S1が長くなるにつれ健常者と比較してS2を過小評価する傾向があった。②健常者20名、PD患者9名で実施。呈示された時間が3秒以上になると、両群とも時間を短めに再生したが、呈示した時間の長さが5秒よりも長いと、PD患者は正常者よりも時間を短く再生した。③本課題では短いISIでは音に合わせてタッピングするのは容易だが、ISIがのびると(1-2秒以上)音に合わせてボタン押しができなくなる(時間的統合の限界)。この限界は正常者20名、PD患者16名で有意に違わなかった。しかし重症度ごとにみると、PDの軽症群では健常群に比べて限界値は延長するが、中等症以上の群では短縮する傾向があった。小脳疾患患者では時間的統合の限界は正常人と比較し有意に短かった。小脳疾患では今のところ①②の課題については検討数が少ないので今後の課題として残った。
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