研究概要 |
本研究の目的は、脳梗塞急性期における重篤かつ頻度の高い副作用である血栓溶解療法後の出血性梗塞(hemorrhagic transformation; HT)の原因、即ち脳血管内皮細胞障害を直接検出することにより、血栓溶解療法適応判断のbiomarker となり得る新しいタイプの19F-MR トレーサーを開発することである。研究初年度にあたる本年度は1. ラット脳塞栓モデルのHT 再現性最適化、2. トレーサーの開発、3. 19F -MR 画像収集法の最適化を中心に実験を行った。 ラット脳塞栓モデルに関しては、自家血血栓にて中大脳動脈閉塞を作成するモデルおよびシリコン塞栓糸を用い中大脳動脈を閉塞する2モデルで比較検討を行い、どちらのモデルに於いても閉塞後3-5時間後にt-PA投与、再開通を惹起したモデルにて高率にHTをきたすことを確認した。 トレーサーの開発については当初の予定通り6-19F -GM6001の合成法の確立を目的として、実験を行い、現時点では19F標識率が30-50%に達する化合物を作成することに成功した。次年度の動物実験に向け、標識率を50%以上にすべく反応系の改良を行っている。 19F -MR 画像収集法の最適化に関しては、adiabatic pulseを用いた高空間分解能分子イメージング画像を得られる撮像法(adiabatic FSE)を開発し(Igarashi H et al, J Neuroimaging, 24, 324-328, 2013)、本手法を含む各種撮像法の比較を19F-3FDG投与マウス脳にて比較検討した所、高空間分解能画像を得るにはadiabatic FSE法が、高シグナル/ノイズ比を得るにはmagnetic resonance spectroscopic imaging法が優れることを確認し、目的により使い分けることとした。
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