研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症の非侵襲的な診断法を開発するため、銀/塩化銀電極を細かく多数配置した高密度表面電極を作成し汎用筋電計を用いて単一運動単位電位の分離同定法を開発した。本電極の電気的空間分解能は感覚神経活動電位の微小局在の検討により検証された。健常対象者および筋萎縮性側索硬化症患者の短母指外転筋、第一背側骨間筋、小指外転筋に電極を貼付し随意収縮による単一運動単位電位を記録した。収縮が中等度以上になると干渉波を形成するため弱収縮時のみを評価対象とし、初めに動員される運動単位電位から3種目までの最大振幅となる電極位置で得られた波形の形状および発火頻度を評価した。筋萎縮性側索硬化症群では単一運動単位電位の振幅および陰性部分面積とも健常群より有意に高値であった(p<0.01)。単一運動単位電位の大きさと罹病期間の間に相関はなかった。早期診断に有用とされる線維束性収縮電位の検出については複数電極からの波形を分析することで94%の確率で随意収縮電位との判別が可能であった。筋萎縮性側索硬化症の非侵襲的診断および評価に関しては超音波検査の活用が考えられたため、特に評価が困難である呼吸機能について、超音波検査上の呼気時の横隔膜の厚みと複合筋活動電位振幅および努力性肺活量について検討したところ三者に相関がみられ (r=0.74, r=0.53)、補助検査としての有用性が確認された。高密度表面筋電図は検査が容易で侵襲性が低いが、超音波検査などの他の非侵襲検査と併用した有用性を検討していく必要がある。
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