研究課題
コハク酸シベンゾリンは、Vaughan Williamsらの分類でクラスI型の作用を示し,活動電位の持続時間の延長及び高濃度において内向きCa2+電流の抑制作用を示す。本剤は未変化体として尿中に55~62%が排泄され、腎機能低下の患者において、筋無力症状や低血糖を来すことが知られている。 また、LEMSは電位依存性カルシウムチャネルに対する抗体(抗VGCC抗体)により、神経筋伝達障害が生じる。そこで、コハク酸シベンゾリンの運動終板の変化とLEMSの運動終板の微細構造の変化を検討した。対象及び方法:コハク酸シベンゾリンによる筋無力症状を呈した76歳女性。Harvey Marsland testで16%のwaning、テンシロンテスト陽性を示した。左上腕二頭筋から神経筋接合部の筋生検、また、抗VGCC抗体陽性のLEMS 5名からの筋生検がなされた。シベンゾリンによる筋無力症およびLEMSの運動終板でペルオキシダーゼでラベルしたバンガロトキシンの染色性は保たれ、アセチルコリン受容体の減少及び補体の沈着はなかった。微細構造の変化では、神経終末のサイズがシベンゾリンによる筋無力症候群とLEMSで大きくなっていた。結論:カルシウムの流入が抑制されることにより、一次シナプス間隙へのアセチルコリンの分泌が抑制され、代償的に神経終末の肥大が惹起されると推測される。今年度は、DOK-7をコードする遺伝子に変異を加えた、DOK-7欠損マウス、コントロールマウス、DOK-7過剰発現マウスの運動終板の微細構造を観察した。DOK-7欠損マウスにおいても、DOK-7過剰マウスともに運動終板の襞の形成が不十分であった。DOK-7が欠損しても、過剰で合っても、後シナプスの形成に影響を及ぼし、かつ、神経終末にも影響を及ぼしうる。
4: 遅れている
遅れた理由の一つに、電子顕微鏡の冷却装置の故障により、2ヶ月ほど、装置が運用できなかったことにある。現在、修理済みで利用可能。抗LRP4抗体陽性MGに関しては、運動終板を切り出すのに、時間がかかっているが、鋭意努力して、数多くの運動終板の写真を得ていく。また、コハク酸シベンゾリン中毒に関しては、症例の蓄積は望めないので、動物実験で対応しているが、満足できるモデルが巧くできてないので、薬剤の投与量の検討、方法を検討し、動物実験を再施行中である。
重症筋無力症、抗MuSK抗体陽性MG,LEMSは、6例から20例の症例の蓄積があり抗LRP4、コハク酸シベンゾリン中毒による筋無力症候群に関しては1例のみ運動終板が保存されている。頻度の少ない疾患ではあるので、1例であっても、現在持っている抗AChR抗体陽性MGの症例を数多く分析し、これらの1症例との比較が分析出来るよう研究を勧めたい。また、コハク酸シベンゾリン中毒に関しては、症例の蓄積は望めないので、上述したような動物実験で対応したい。モデルが巧くできないので、薬剤の投与量の検討など、動物実験では再施行中である。抗LRP抗体MGに関しては、運動終板の写真撮影を行い数を増やしていく。
電子顕微鏡の故障による実験計画および、動物実験の遅れにより、当初予定していた消耗品の使用量が少なくなったことが主な理由である。動物実験の再施行、運動終板の写真撮影の数を増やすことにより、実験動物代、撮影用フィルム、印画紙等の消耗品に使用する予定である。
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