研究課題/領域番号 |
25461321
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
今井 富裕 札幌医科大学, 保健医療学部, 教授 (40231162)
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研究分担者 |
山本 大輔 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (00514556)
津田 笑子 札幌医科大学, 医学部, 助教 (90464495)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 重症筋無力症 / 興奮収縮連関 / 加速度 / 反復刺激後増強 / アイスパックテスト / カルシウムイオン / 短母指外転筋 |
研究実績の概要 |
昨年度確立した反復刺激後増強(post-tetanic potentiation: PTP)を用いた検査法の有用性を検証するため、重症筋無力症(myasthenia gravis: MG)患者、筋疾患(ミオパチー)患者、健常者の3群を対象とした比較研究を行った。検査方法は昨年報告した通りで、手根部で正中神経を10 Hzで反復刺激した後、短母指外転筋の複合筋活動電位(compound muscle action potential: CMAP)と母指の動き(最大加速度)を経時的に記録し、PTPによるCMAP、CMAP area、最大加速度、興奮収縮連関時間(excitation-contraction coupling time: ECCT)の変化を調べた。MG群、ミオパチー群ともに正常群に比較して、安静時の最大加速度とテタヌス刺激後の最大加速度が有意に低値で、テタヌス刺激前も後も正常筋よりも収縮力が低下していると考えられた。しかし、安静時とテタヌス刺激後の最大加速度の比較から、MG群の方がミオパチー群よりも有意にPTPが障害されていることが明らかになった。すなわち、PTPの減弱はMGにより特異的な所見であると考えられた。 MGでは興奮収縮連関が障害されているため、筋収縮加速度のPTPが減弱していると考えられ、本法はMGの興奮収縮連関障害を特異的に検出する検査法として臨床応用できる。さらに今年度は、MGの筋疲労を検出するための条件刺激として、反復電気刺激ばかりでなく、「筋冷却(アイスパックテスト)」の有用性が示唆された。MG患者では、冷却後に罹患筋の収縮加速度の増大,ECCTの短縮が長時間持続し、罹患筋力の増強がみられたのに対して、正常群では、いずれのパラメーターも冷却前後で変化しなかった。 以上の成果は平成26年5月の日本神経学会総会(福岡)、平成26年11月の日本臨床神経生理学会学術大会(福岡)で発表され、現在、英文誌に投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度の研究目的に挙げていた研究法の特異性について検証することができ、さらにMGの興奮収縮連関障害を検出する新たな方法として「筋冷却(アイスパックテスト)」を応用できるメドが立った。これらの研究成果を国内学会で発表し、英文論文として投稿する準備ができた。
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今後の研究の推進方策 |
「MG診療ガイドライン2014」に記載された新たな診断基準案には、神経筋接合部障害を検出する検査としてアイスパックテストが採用されているが、本研究によって、筋冷却によるECCTの短縮や筋収縮加速度の増大が明らかになってきた。平成27年度はMGにおける筋冷却と筋力増強の関連について詳細を明らかにし、アイスパックテストの生理学的機序を解明していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の未使用額では、老朽化した加速度計測システム一式を更新できないため。
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次年度使用額の使用計画 |
新たに加速度計測システム一式を購入する。
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