研究課題
記録電極に神経近傍へ挿入した針電極を用いる神経近接法は、電位の検出力に優れた神経伝導検査の方法である。しかし、針電極を神経近傍に誘導する手技に熟練を要するため、普及率が低いという問題があった。本研究の目的は手技の難しい神経近接法を、超音波ガイドを用いることによって簡便で確実に行う方法を確立することである。最初に、超音波ガイド下での針電極の挿入の位置や角度を検討したところ、超音波だけでは、針電極の描出が困難な場合があった。そこで、超音波で挿入位置を決め、針電極の方向と深さは電気刺激によって誘導する方法を検討した。対象の神経は多発神経障害の初発となることが多い脛骨神経と浅腓骨神経とした。脛骨神経では内果あるいは、やや近位のレベルで、超音波短軸像により円形に描出された脛骨神経の中心を針電極の挿入位置とした。挿入した針電極に電気刺激を行いながら針電極の深さを決定した。次に、この針電極を記録電極に転用して神経伝導検査を行うと、安定した感覚神経活動電位が得られた。浅腓骨神経では、下腿外側の外果より14-18 cm近位の下腿外側で、超音波を用いて長趾伸筋と長腓骨筋の境界にある腓骨の前縁の角から浅腓骨神経を同定した。針電極を挿入して電気刺激を用いて深さを決定した。これを記録電極に転用して、神経伝導検査を行うと、安定した感覚神経活動電位が得られた。超音波ガイドを用いることで針電極を神経の直上から刺入することが容易となった。その結果、手技の難度が高い神経近接法を簡便で確実に行う方法を確立することができた。本方法を末梢神経障害の患者に施行したところ、障害の評価に有用であった。また、下腿のような解剖学的指標がない場所、また神経の走行が皮膚直下ではない深層への針電極の挿入にも応用できる可能性が示唆された。
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J Electromyogr Kinesiol.
巻: 25 ページ: 689 - 696
10.1016/j.jelekin.2015.04.004