研究課題
基盤研究(C)
糖尿病が進行すると、2型糖尿病においてもインスリン産生膵ランゲルハンス島β細胞が徐々に機能不全に陥り、1型糖尿病と同様、インスリン投与が必要となる。このような膵β細胞障害のメカニズムの解明を目的とする。本研究者らは、これまでに糖化タンパク(advanced glycation end-products, AGE)とその受容体(receptor for AGE, RAGE)相互作用が糖尿病血管合併症の発症進展に関わることを提唱してきた。本研究においては、RAGEが膵β細胞機能不全にどう関わるのかをin vitro/in vivoの両面からのアプローチにより調べた。まず、膵β細胞上にRAGEが発現しているかどうかを検討するため、各種2型糖尿病モデルマウス[ob/ob, db/db, diet-induced obese (DIO)マウス]から膵ランゲルハンス島を分離し、酵素で単一細胞にまで分散後、フローサイトメトリーを用いて定量評価した。対照の非糖尿病野生型マウス、RAGE欠損マウス由来の膵β細胞においてはRAGEの発現は認められなかったが、ob/obマウス、db/dbマウス、DIOマウスでは膵β細胞にRAGE発現を認めた。マウス膵β細胞由来MIN-6細胞でも、遊離脂肪酸である0.2 mMパルミチン酸、あるいは0.2 mMオレイン酸の24時間暴露によりRAGEが細胞膜上に発現誘導されることが分かった。RAGE欠損マウスをdb/dbと掛け合わせることで、RAGE欠損db/db (RAGE-/-db/db)マウスとRAGE野生型db/db(RAGE+/+db/db)マウスを作製し調べると、耐糖能、インスリン分泌能はRAGE-/-db/dbマウスにおいてより良好で、アポトーシス細胞数、膵β細胞容積・数も保たれ、膵β細胞疲弊から免れていることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画の通り、in vitro/in vivo の系において、膵β細胞上でのRAGE発現の確認とRAGE発現誘導の系を確立した。今後は、新たにRAGE発現誘導のメカニズム解明を行い、さらに、それを標的とした抑制実験とRAGE抑制による膵β細胞障害保護効果を検証していく予定である。
膵β細胞上でのRAGE発現誘導機構にパルミチン酸やオレイン酸の遊離脂肪酸の刺激が関わることが明らかになったので、脂肪酸トランスポーターやToll-like receptor (TLR)、G protein-coupled receptors (GPRs)などの関与を調べる。また、レプチン受容体(LepRb)、レプチン受容体細胞内シグナルの効果も検討する。また、各種RAGEリガンドが膵β細胞機能障害に与える影響も調べる。
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