研究課題
基盤研究(C)
当該年度は、肥満・インスリン抵抗性におけるS100Bの意義を明らかにする目的で、S100Bノックアウトマウスの作成とこれを用いた基本的な検討を行った。まず理化学研究所BRCから100Bヘテロノックアウトマウスを入手した。同マウスを交配させて仔マウスの遺伝子型を確認し、S100Bホモノックアウトマウスを得た。得られたホモノックアウトマウスを交配させて本実験に必要な個体数まで繁殖作業を行った。同時に、予備実験としてヘテロマウスから得られた少数の野生型、ヘテロ、ホモマウスを高脂肪食で飼育しており、実験計画書に従い、体重変化、耐糖能、インスリン抵抗性、炎症性サイトカイン測定などを近日中に実施予定である。また、我々は細胞実験において脂肪細胞とマクロファージの炎症性相互作用におけるS100Bの重要性を確認し、これを論文報告した(Obesity 22:371-79, 2014)。この結果は肥満・インスリン抵抗性における脂肪細胞由来のS100B蛋白の重要性を証明したものである。現在、肝細胞(HepG2細胞および上記マウスから得た初代細胞)を用いて、肝におけるインスリン作用・糖代謝に対するS100B蛋白の影響を検討しており、興味深い結果を得つつある。我々はS100B蛋白の門脈内濃度が末梢血より高いことも確認しており、これらの結果は、内臓脂肪由来のS100B蛋白が脂肪組織の炎症のみならず肝代謝にも影響する可能性を示唆するものととらえている。
4: 遅れている
理化学研究所BRCにS100Bノックアウトマウスを購入依頼したが、事前に同施設より得た情報ではホモノックアウトマウスで納入される予定であった。しかし同施設における凍結保存胚からのホモノックマウス作成が不調であったため、ヘテロマウスでの納入となった。そのため、まずヘテロマウスからホモマウスを作製する手順が必要となり、予定よりも数カ月の遅れが生じている。
実施中の少数個体を用いた高脂肪食負荷予備実験および細胞実験の結果を確認し、本実験の内容を適宜修正したうえで開始する。平成26年度末までに、肥満モデル実験の検討を完了したい。並行して、少数個体において薬剤性糖尿病を誘発し、糖尿病モデルにおける末梢神経障害など合併症に関して予備実験を施行する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Obesity
巻: 22 ページ: 371-9
10.1002/oby.20532