骨格筋には白筋(I型)と赤筋(II型)があり、筋肉に占めるミトコンドリア量と筋繊維の質に違いがある。我々は骨格筋系の培養細胞であるC2C12筋管細胞の分化の課程においてmicroRNA494発現が減少し、発現減少によりミトコンドリアタンパク質が逆に増加する事を報告している。 本研究の目的はmicroRNA494の骨格筋、脂肪における役割をさらに詳細に検討する事であった。 我々は京都大学iPS研究所との共同研究によりヒト骨格筋分化モデルにおいては、microRNA494発現はMyoDによる分化誘導直後には一過性に上昇するものの、その後経時的に減少していくことを見出した。microRNA494の過剰発現により赤筋であるI型の筋繊維であるMyh7の発現には差を認めなかったが、II型繊維の中でもミトコンドリアの多いIIA型の筋繊維であるMyh2は減少する事が分かった。この現象と同様に、microRNA494過剰発現は細胞外セルフラックスアナライザーで計測した酸素消費速度を低下させ、筋繊維の同定に従来より用いられるNADH活性染色でも染色性が落ちることが分かった。さらに、Myh2をsiRNAでノックダウンする事でも酸素消費速度が低下する事から、microRNA494はMyh2の低下を介して細胞内呼吸を調整している事が分かった。 これらの成果より骨格筋におけるmicroRNA494のミトコンドリアに対する役割はマウスのみならず、ヒトでも共通して観察されることが分かった。 加齢や2型糖尿病モデルにおけるmicroRNA494の役割については現在も研究を継続している。加齢マウスの骨格筋でmicroRNA494発現が多いことを観察しており、サルコペニアの治療標的とならないかどうかについて検討を進める予定である。
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