研究課題/領域番号 |
25461343
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
堀田 紀久子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30360639)
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研究分担者 |
北本 卓也 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (10456882)
北本 綾 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (30381627)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 非アルコール性脂肪肝疾患 / 次世代シークエンサー / ターゲット・リシークエンス / エピゲノム |
研究概要 |
ゲノムワイド関連解析(GWAS)で同定した非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)感受性領域(PNPLA3、SAMM50、PARVB遺伝子領域)を含む108kbのゲノム領域を16個のlong-range PCR (3.8–13.6 kb)にて増幅した。PCRは28人のNAFLD患者の血液由来ゲノムを用いた。PCR産物を混合してイルミナTruSeq DNA Sample Preparation kitで調節後、次世代シークエンサー(MiSeq)にて配列を決定した。この領域に関しては大きな構造変化やCNVなどは見出せなかった。シークエンスで同定した5%以上の頻度の201遺伝子多型について540人のNAFLDと1012人のコントロールでタイピングを行った。180個の遺伝子多型でタイピングに成功し、7個の欠失を含む頻度10%以上の169遺伝子多型を用いて連鎖不平衡マップ(LD)を作成した。NAFLDと強い相関を認めた領域は4個のLDブロックに分かれた。PNPLA3遺伝子は2個のブロックにSAMM50は1個、PARVB遺伝子の5’側は1個のブロックに含まれていた。全てのブロックでNAFLDと強い相関が認められた。非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と脂肪肝との相関解析、及び肝臓の繊維化にはブロック1と4が強い相関を示した。NAFLD activity score (NAS)はブロック2と4で強い相関を認めた。NAFLD発症にはPNPLA3、SAMM50、PARVB遺伝子が、進展にはPNPLA3、PARVB遺伝子が重要であることが示唆された。候補遺伝子解析でGCKRとTRIB1がNAFLDと相関を示し、GCKRの多型は中性脂肪や内臓脂肪量とも関連していた。GCKRとTRIB1の多型は繊維化やNASとの関連がなく、進展には関連していないことが示唆された。以上を論文に報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究計画であるlong PCRによるターゲットゲノム領域の増幅と次世代シークエンサーMiSeqによる解析のうち、NAFLDにおけるPNPLA3、SAMM50、PARVB遺伝子を含む領域については終了した。内臓脂肪蓄積についてはSH2B1を含む領域についてlong PCRまで終了している。シークエンス解析結果の大規模解析についてはNAFLDにおけるPNPLA3、SAMM50、PARVB遺伝子を含む領域については終了した。Long PCR法によるエピゲノム解析の開発については、1.5kbまではPCRを行えたが、それ以上についてはバイサルファイト処理により塩基の種類が3個にまで減少し特異的なプライマー設計が困難であること、バイサルファイト処理によりゲノムが不安定になり分解しやすくなることから困難であることが判明した。しかし、NAFLD症例の肝組織より抽出したゲノムとRNAを32人分収集することができた。32人全てで肝臓ゲノムとRNAをそろえることができた。このうち、19症例についてはPNPLA3、SAMM50、PARVB遺伝子のCpG islandについてメチル化解析を次世代シークエンサーMiSeqにて解析できた。シークエンサーから出た結果をマッピングする方法やメチル化レベルの解析も確立した。追跡調査についてはきょうどう連携研究者に依頼しており、NAFLD症例で複数回、組織診断を行っている症例も数十例集まってきている。以上より、研究計画はおおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
26年度以降はエピゲノム解析をヒトと動物モデルによる解析を行う予定である。サンプルは充分そろってきており、方法も確立してきた。ターゲットのエピゲノム解析を完成させる予定である。次世代シークエンサーでのメチル化解析はマッピングが困難であることやバイサルファイト処理によるゲノムの断裂が予想以上悪いことから、全ゲノムにわたる解析はチップで行う予定である。RNAについては次世代シークエンサーでの解析を予定している。RNAの発現量とメチル化との関連を検討する。連携研究者から肝臓ゲノムの追加サンプルが得られる予定である。報告時点で32症例であるが、96症例を目標に収集していく。 動物モデルとして研究協力者から肥満・糖尿病を自然発症するアカゲザルの肝臓と骨格筋から抽出したゲノムの提供を受けている。エネルギー過剰摂取状態がゲノムのメチル化に及ぼす影響を検討する。アカゲザルのメチル化チップはないので、ターゲットに絞って検討する。特に、ヒトNAFLDのメチル化解析の結果で差がついたところに関してメチル化の検討を行う。アカゲザルの骨格筋でメチル化解析を行い、肝臓特異的なメチル化の変化かどうかを検討する。 連携研究者より追跡調査についての臨床情報を提供してもらい、遺伝子多型やメチル化レベルとNAFLDの進行との関連性を検討する。内臓脂肪蓄積に関してもSH2B1、LYPLAL1ターゲット・リーシークエンス及び、大規模解析を行っていく。
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