研究課題
基盤研究(C)
インクレチンであるGIPは、高脂肪食負荷状態で血糖維持のための代償的インスリン分泌増加に関与していること、脂肪への直接的なエネルギー蓄積作用を有することが知られている。以上から高脂肪食負荷状態でGIPは、脂肪への直接作用とインスリンを介した間接作用によって肥満を誘導する。また骨組織でGIPは、カルシウムイオンの蓄積にも関与する。本研究ではGIP分泌減少(GIP+/-)及びGIP分泌欠損(GIP-/-)マウスを作製し、生体内でのGIPの分泌抑制が主要なGIP標的臓器である膵β細胞、骨及び脂肪組織にどのような影響を及ぼすかを評価し、特にGIP分泌抑制による抗肥満効果を検討した。通常食負荷下のGIP+/-とGIP-/-マウスでは、経口糖負荷早期のインスリン分泌が野生型(WT)マウスと比較して有意に低下し、糖負荷後の高血糖を認めた。骨形態を比較検討したところ、GIP-/-マウスはWT及びGIP+/-マウスに比較して有意な骨量と骨梁径の減少を認めた。10週間の高脂肪食負荷によってWTマウスは通常食負荷WTマウスと比較して有意な体重増加を認めた。高脂肪食負荷GIP+/-とGIP-/-マウスは、高脂肪食負荷WTマウスに比較して有意に体重が減少し、特にGIP-/-マウスは、3群間で最も低値を示した。10週間の食事負荷後に経口糖負荷試験を行った。高脂肪食負荷は、WTマウスにおいて経口糖負荷後のGIP分泌を2倍に増加させた。一方、高脂肪食負荷GIP+/-とGIP-/-マウスでは、高脂肪食負荷WTマウスに比較して、GIP分泌の50%減少と欠損を認めた。糖負荷後のインスリン分泌量や血糖値は、3群間で有意な差を認めなかった。以上から通常食負荷状態でGIP分泌の減少や欠損は、耐糖能低下や骨量減少させる可能性がある。一方で、高脂肪食負荷下では、GIP分泌量依存的に体重増加を抑制する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
GIP分泌減少及び欠損モデルマウスでの解析が順調に進行している。すでに高脂肪食負荷GIP分泌減少及び欠損マウスのCTによる体組成解析や単離膵島を用いたインスリン分泌能の評価、インスリン負荷試験によるインスリン抵抗性の評価も終了している。
現在、高脂肪食負荷肥満モデルマウスでの評価を行っているが、今後は、GIP分泌減少及び欠損ob/obマウスを作製し、過食肥満モデルマウス下でのGIP分泌抑制の効果も評価していく予定である。
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