研究課題
平成27年度は膵島機能の中でのインクレチン効果について臨床的観点を踏まえた分析を行った。インクレチン効果の定義は膵β細胞における経口負荷によるブドウ糖応答性インスリン分泌の増強であるが、この他にも経口負荷時における膵α細胞からのグルカゴン分泌の修飾(抑制)が、インクレチン作用の重要な視点であることが知られている。私たちはこの経口負荷後のグルカゴン分泌抑制が実際に十分でないことを報告した。また、インスリン分泌増強とグルカゴン分泌抑制の両者が関与する(gastrointestinally mediated glucose disposal)GIGDが糖尿病状態で低下していることをしめすとともに、GIGDの低下は経口負荷後早期のグルカゴンと有意な相関があることを明らかにした。グルカゴンはGIPによって分泌惹起されることが示されており、われわれの検討結果でも負荷後グルカゴン分泌とGIPとの関連が示唆されている。これらから糖尿病状態における糖処理能力の低下に関わる膵島機能にGIPによるグルカゴン分泌修飾の影響の有意性を示すことができた。グルカゴン分泌修飾におけるGIPの役割を明らかにすることが目的の本課題研究では、GIP受容体のコンディショナルノックアウトマウスをもとに膵β細胞特異的GIP受容体欠損モデルマウスを作製し、糖代謝異常時、肥満時のグルカゴン分泌修飾のGIPの役割を直接的に解明する手法を得た。また臨床的検討をあわせて、耐糖能異常(糖尿病状態)における経口栄養素負荷後の糖処理能力の低下にGIPをはじめとするインクレチンを介したグルカゴン分泌反応の修飾がおおきな役割をもっていることをしめした。これらの知見は糖尿病やその初期段階における有効な治療介入の探求に役立ち、そのことが将来の糖尿病の重症化抑制につながっていくことが期待される。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
Journal of Diabetes Investigation
巻: 6 ページ: 302-308
doi: 10.1111/jdi.12289
American Journal of Physiology Endocrinology and Metabolism
巻: 308 ページ: E583-E591
10.1152/ajpendo.00543.2014