研究課題
本研究は、新規蛍光ATPプローブを基に、同プローブ遺伝子導入マウス、さらには肥満糖尿病モデルマウスとの交配による蛍光ATPプローブ遺伝子導入疾患モデルマウスを用いて生細胞のまま生理的条件下で経時的かつリアルタイムに解析し、細胞内糖代謝と糖代謝異常の病態形成機序との関わりの実際を検証・解明することを目的とする。当初の研究計画に沿って、今村(研究分担者)らが開発した蛍光ATPプローブ(GO-ATeam)遺伝子を導入した遺伝子改変マウス(GO-ATeamTg)を作製・系統分け・表現型評価した。細胞内ATP濃度およびCa2+濃度のリアルタイム同時測定系を確立した。さらに病的状態(糖尿病状態)における膵β細胞内ATP濃度およびCa2+濃度動態を解明するために肥満糖尿病ob/obマウスとGO-ATeamTgを掛け合わせた蛍光ATPプローブ導入肥満糖尿病マウスを作成した。また、今村(研究分担者)からATPプローブの供与をうけた山本正道博士(現.京都大学)により作成されたGO-ATeamノックインマウスの共与をうけることによる代謝動態測定を準備中。2014年1月に報告した膵β細胞(野生型マウス)および細胞株にGO-ATeamを導入しグルコース刺激による細胞内ATP動態およびCa2+濃度動態の時間的相互関係を解析した結果(J Biol Chem. 289:2205-2216, 2014)を基にして、今後、より生理的条件に近い上記遺伝子改変マウス膵島細胞を用いた検討により、糖尿病状態での膵β細胞内ATP濃度評価を継続予定。(本研究結果の意義・重要性)生細胞のままβ細胞内ATP動態を鋭敏な反応性をもって測定できる蛍光プローブは本蛍光ATPプローブだけであり、極めて生理学的な条件下で生細胞のまま本プローブ遺伝子導入マウス膵島細胞の細胞内代謝動態の検討は、糖代謝関連疾患理解に非常に有益と思われる。
2: おおむね順調に進展している
当初計画通り、in vitroでの細胞内ATP濃度およびCa2+濃度のリアルタイム同時測定系を確立し、新規蛍光ATPプローブ遺伝子導入肥満糖尿病マウスを作成し、マウスに対する通常食、高炭水化物職、高脂肪食、および果糖負荷プロトコールを確立した。今後これら各条件下での細胞内代謝変化、各種イオン動態変化およびインスリン分泌能変化を継時的に解析し、摂取栄養素による膵β細胞内代謝変化およびインスリン分泌能変化の検討を順次進めていく。
当初計画に沿って、蛍光ATPプローブ遺伝子導入マウスを用いて、健常および病的状態(糖尿病状態)、さらに各種栄養素摂取状況下での膵β細胞内代謝変化およびインスリン分泌能変化を検討し、病態発症・進展メカニズムの解明および創薬基盤となり得る知見の集積を目指す。本研究で得られた成果を国内外の学会および学術誌に発表するとともに教室ホームページ等にも掲載し広く成果を公表する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件)
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