研究課題
基盤研究(C)
インスリン抵抗性モデルマウスにおいて、GSK-3βヘテロ欠損が耐糖能障害を軽減する。本研究課題では、2型糖尿病の病態形成におけるGSK-3の役割について、1)膵β細胞におけるGSK-3を介した細胞障害機構および2)脂肪組織におけるGSK-3を介したエネルギー代謝調節機構の解明を目的とする。膵β細胞は小胞体ストレスや酸化ストレスに脆弱とされ、糖尿病病態では細胞内ストレスの亢進が様々な程度に膵β細胞機能不全に関わると推察される。このようなストレス条件下での膵β細胞アポトーシス誘導におけるGSK-3 の役割について解析を行った。マウス単離膵ラ氏島において薬剤性小胞体ストレス誘導モデルおよび変異インスリンの蓄積により小胞体ストレスが亢進するAkita マウス由来の膵β 細胞においてGSK-3が活性化した。これらのモデルにおいて、GSK-3特異的阻害剤処理によりアポトーシス誘導が減弱した。この時、小胞体ストレスや酸化ストレスに共通したストレス応答分子である転写因子ATF4 蛋白発現が増強し、その転写標的分子の遺伝子発現が増加した。さらに、GSK-3活性抑制による抗アポトーシス効果が、ATF4 knockdownにより減弱した。すなわち、GSK-3によるATF4発現の抑制が、小胞体ストレス誘導性アポトーシス分子機構の少なくとも一部であることが示唆された。一方、脂肪組織において高脂肪食負荷によりGSK-3βが活性化した。さらに、PPARγがGSK-3のリン酸化標的であることを見出した。すなわち、GSK-3がリン酸化を介してPPARγの転写機能を調節する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
細胞モデルやマウスモデルでの解析を踏まえて、分子機構の解明を現在行っている。探索的研究から具体的なシグナル経路の解析に着手し、cDNAやウィルスベクターの作成は終了している。作業仮説に矛盾しない研究結果を得ている。
GSK-3を介したATF4発現調節、転写調節機構を解明する。さらに、GSK-3-ATF4経路を介したアポトーシス誘導機構の解明を行う。ここでは、ストレス応答経路であるeIF2alpha-ATF4による適応的な翻訳制御へのGSK-3抑制の影響について細胞モデルを用いて解明する。GSK-3がPPARγ転写機能をリン酸化により調節する可能性が考えられる。この点についての検証として、培養脂肪細胞においてGSK-3活性抑制によるPPARγ発現レベルや標的遺伝子発現変化について解明する。次に、PPARγ転写活性およびPPARγとそのcofactorやcorepressorとの結合に対するリン酸化の影響を解明する。さらに、インスリン抵抗性改善薬であるチアゾリジン系薬剤がGSK-3とPPARγとの結合およびリン酸化に与える影響を解明する。
本年度の実験計画に変更は特にないが、動物実験および生化学実験が順調に進んだことや実験試薬・消耗品の変更などに伴い、次年度使用額が生じた。次年度使用額については、平成26年度の生化学実験に用いる実験試薬、消耗品の購入に合わせて使用する予定であるが、特に、抗体購入、網羅的遺伝子発現解析の費用として使用することを予定している。
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Diabetology International
巻: in press ページ: in press
10.1007/s13340-013-0145-8
Biochem Biophys Res Commun.
巻: 434(2) ページ: 370-375
10.1016/j.bbrc.2013.03.084.