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2014 年度 実施状況報告書

p27によるマクロファージ増殖制御の糖尿病・動脈硬化における生理学的意義の解明

研究課題

研究課題/領域番号 25461361
研究機関熊本大学

研究代表者

瀬ノ口 隆文  熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (00530320)

研究分担者 松村 剛  熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (20398192)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード脂肪浸潤マクロファージ / インスリン抵抗性 / 動脈硬化
研究実績の概要

【目的】動脈硬化病変や脂肪組織における組織浸潤マクロファージの増殖が、動脈硬化および耐糖能異常の発症・進展に及ぼす生理学的意義を、マクロファージ特異的増殖抑制マウスを用いて検討した。
【方法】スカベンジャー受容体遺伝子プロモーター制御下にサイクリン依存性キナーゼ阻害因子 p27kipを発現するマクロファージ特異的増殖抑制マウス(mac-p27Tg)を作成した。①mac-p27Tgへの高脂肪食負荷群、mac-p27Tgとob/obマウスとの交配群(ob/ob×mac-p27Tg)において、耐糖能に対するマクロファージ増殖の影響を検討した。ipGTT、ipITTを行い耐糖能を評価した。精巣上体周囲脂肪組織の組織学的変化、炎症性サイトカインの発現を検討した。②ApoE-/-×mac-p27Tgにおいて、動脈硬化病変の発症・進展に対するマクロファージ増殖の影響を検討した。大動脈弁輪部切片のプラーク面積を計測した。レーザーマイクロダイセクションで回収した動脈硬化病変組織におけるmRNA発現を検討した。
【結果】①ipGTTにおいて、マクロファージ増殖抑制による血糖上昇の抑制を認めた。ipITTでは、HFD mac-p27Tg群、ob/ob×mac-p27Tg群共に有意なインスリン抵抗性の改善を認めた。脂肪組織では、HFD mac-p27Tgの浸潤マクロファージ及びCrown-like structure形成の減少、TNF-α、IL-6 mRNA発現の減少を認めた。②ApoE-/-×mac-p27Tgにおける大動脈弁輪部切片のプラーク面積は有意に減少していた。プラークにおけるIba-1、Ki67陽性の増殖マクロファージはApoE-/-×mac-p27Tg群で減少し、動脈硬化病変部におけるCD68、IL-6、MCP-1、IL-1βmRNA発現は減少を認めた。【結論】マクロファージ特異的増殖抑制マウスにて、①インスリン抵抗性の改善、②動脈硬化病変部の炎症性サイトカイン抑制、プラーク形成の抑制を認めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

マクロファージ特異的human p27kipトランスジェニックマウス(mac-p27Tg)を作成した。本マウスは、マクロファージ特異的にp27kipを発現することで分化を遂げたマクロファージの増殖を特異的に抑制する。動脈硬化病変形成に対するマクロファージ増殖の意義の検討を行うために、動脈硬化モデルマウスであるApoE欠損マウスとの交配を行い、得られたマウスにおける動脈硬化病変の発症、進展を検討した。また、マクロファージ増殖の耐糖能への影響を①mac-p27Tgに高脂肪食負荷を行う系、②mac-p27Tgと肥満糖尿病モデルマウスであるob/obマウスとの交配を行う系において検討した。これらの動物実験は軌道に乗り、科学的解析を行うに十分な個体数を得られており、動脈硬化病変や脂肪組織における遺伝子発現の検討に至っている。また、糖代謝への影響の検討においては、脂肪組織のみならず、肝臓、膵島へのマクロファージ浸潤と増殖の意義についての検討を開始した。個体としての表現型の差異は確認できたものの、特にin vitroの実験系での細胞および分子レベルにおける、動脈硬化、耐糖能異常の発症・進展におけるマクロファージ増殖の意義、またマクロファージ増殖に関与する分子の同定とその生理的意義の解明に至るには十分な検討を行えていないことから「やや遅れている」と判断する。

今後の研究の推進方策

In vivoの解析では、これまでマクロファージ特異的p27発現マウスを用いた検討であったが、現在さらにマクロファージ特異的Tet-onシステムを用いた系を構築しており、p27発現の時間的・空間的制御によりマクロファージ増殖の調節を行うことで、マクロファージ増殖の病態への関与をさらに詳細に検討することができると考える。本システムにより、これまで当教室が提唱してきた、スタチンやその他の薬剤によるマクロファージ増殖抑制を介した抗動脈硬化作用を明らかにし得ると考える。糖代謝に対する組織マクロファージ増殖の関与については、おもに脂肪組織、肝臓の組織マクロファージにおいてFlow cytometoryを用いた解析を行い、増殖とマクロファージ極性(M1/M2)の関与、浸潤マクロファージと常在マクロファージの増殖能とそれらの病態への関与を明らかにすることができると考えている。さらに、In vitroの実験系では引き続き動脈硬化、耐糖能異常の発症・進展におけるマクロファージ増殖の意義の解明をめざし、マクロファージ増殖に関与する分子の同定とその作用機序の検討を行っていきたい。

次年度使用額が生じた理由

当初の研究計画に従いほぼ予定通りに研究を遂行し、次年度使用額3124円を残すのみとなった。

次年度使用額の使用計画

研究消耗品の費用の一部として使用予定。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] Statins meditate anti-atherosclerotic action in smooth muscle cells by peroxisome proliferator-activated receptor-γ activation.2015

    • 著者名/発表者名
      Fukuda K, Matsumura T, Senokuchi T, Ishii N, Kinoshita H, Yamada S, Murakami S, Nakao S, Motoshima H, Kondo T, Kukidome D, Kawasaki S, Kawada T, Nishikawa T, Araki E.
    • 雑誌名

      Biochem Biophys Res Commun.

      巻: 457 ページ: 23-30

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2014.12.063

  • [雑誌論文] SIRT7 controls hepatic lipid metabolism by regulating the ubiquitin-proteasome pathway.2014

    • 著者名/発表者名
      Yoshizawa T, Karim MF, Sato Y, Senokuchi T, Miyata K, Fukuda T, Go C, Tasaki M, Uchimura K, Kadomatsu T, Tian Z, Smolka C, Sawa T, Takeya M, Tomizawa K, Ando Y, Araki E, Akaike T, Braun T, Oike Y, Bober E, Yamagata K.
    • 雑誌名

      Cell Metab.

      巻: 19 ページ: 712-21

    • DOI

      10.1016/j.cmet.2014.03.006

  • [学会発表] Impacts of Local Macrophage Proliferation on Atherosclerotic Plaque Progression and Obesity-associated Adipose Tissue Inflammation.2015

    • 著者名/発表者名
      Sarie Yama, Takafumi Senokuchi, Takeshi Matsumura, Takeshi Nishikawa, Eiichi Araki
    • 学会等名
      75th Scientific Sessions, American Diabetes Association
    • 発表場所
      Boston, U.S.A.
    • 年月日
      2015-06-05 – 2015-06-09
  • [学会発表] インスリン抵抗性及び動脈硬化の発症・進展に対する組織浸潤マクロファージ増殖の生理学的意義の検討2015

    • 著者名/発表者名
      山田沙梨恵, 瀬ノ口隆文, 松村 剛, 本島寛之, 石井規夫, 木下博之, 福田一起, 西川武志, 荒木栄一
    • 学会等名
      第58回日本糖尿病学会年次学術集会
    • 発表場所
      下関市
    • 年月日
      2015-05-21 – 2015-05-24
  • [学会発表] インスリン抵抗性、動脈硬化の発症・進展 における組織浸潤マクロファージ増殖の 生理学的意義の検討2014

    • 著者名/発表者名
      瀬ノ口 隆文、山田 沙梨恵、松村 剛、 本島 寛之、西川 武志、荒木 栄一
    • 学会等名
      第26回分子糖尿病学シンポジウム
    • 発表場所
      高知市
    • 年月日
      2014-12-06 – 2014-12-06
  • [学会発表] Statin-mediated PPARγ activation in adipocytes may improve glucose tolerance in high fat-fed mice.2014

    • 著者名/発表者名
      Takafumi Senokuchi, Takeshi Matsumura, Kazuki Fukuda, Norio Ishii, Hiroyuki Kinoshita, Sarie Yamada, Saiko Murakami, Tatsuya Kondo, Hiroyuki Motoshima, Takeshi Nishikawa, Eiichi Araki
    • 学会等名
      6th AASD Scientific Meeting
    • 発表場所
      Singapore
    • 年月日
      2014-09-21 – 2014-09-24
  • [学会発表] Inhibition of Local Macrophage Growth Ameliorates Focal inflammation in the Plaque and Suppresses Atherosclerosis in ApoE-deficient Mice.2014

    • 著者名/発表者名
      Takafumi Senokuchi, Sarie Yamada, Emi Negita, Takeshi Matsumura, Takeshi Nishikawa, Eiichi Araki
    • 学会等名
      9th Metabolic Syndrome, Type 2 Diabetes and Atherosclerosis Congress
    • 発表場所
      Kyoto, Japan
    • 年月日
      2014-09-12 – 2014-09-13
  • [学会発表] 糖尿病における動脈硬化症進展の体質医学的研究 組織浸潤マクロファージ増殖の意義の検討2014

    • 著者名/発表者名
      瀬ノ口 隆文
    • 学会等名
      第64回日本体質医学会総会
    • 発表場所
      大阪市
    • 年月日
      2014-09-06 – 2014-09-07
  • [学会発表] 動脈硬化病変形成におけるマクロファージ増殖の病態生理学的意義の検討2014

    • 著者名/発表者名
      山田 沙梨恵、瀬ノ口 隆文、松村 剛、本島 寛之、石井 規夫、木下 博之、福田 一起、西川 武志、荒木 栄一
    • 学会等名
      第46回日本動脈硬化学会総会・学術集会
    • 発表場所
      東京都
    • 年月日
      2014-07-10 – 2014-07-11

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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