研究課題/領域番号 |
25461363
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
石田 均 杏林大学, 医学部, 教授 (80212893)
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研究分担者 |
犬飼 浩一 杏林大学, 医学部, 准教授 (20333007)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 2型糖尿病 / マクロファージ / 膵β細胞 / 脂肪細胞 / MCP-1 / 内因性酸化ストレス / Astaxanthin / JNK経路 |
研究実績の概要 |
2型糖尿病の膵ラ氏島では、マクロファージの浸潤に伴い慢性的な炎症が惹起され、インスリン分泌不全が生じると想定される。一方で、抗酸化物質のAstaxanthin(AX)は脂肪組織において慢性炎症を改善させると報告されている。そこでβ細胞株MIN6にパルミチン酸(PA)を負荷し、慢性炎症惹起の鍵因子であるMCP-1の分泌動態を解析するとともに、これに対するAXの影響とその機序を検討した。 方法としては、(1)MIN6細胞を10μMのAXにて前処置した後、0.3mM PA、0.3mM H2O2を添加し24時間後のMCP-1分泌量を解析した。(2) MIN6細胞をJNK阻害剤のSP600125にて前処理後PAで刺激し、MCP-1の分泌量を解析した。またAXで前処理後、PA刺激によるJNKのリン酸化も評価した。 その結果、(1) 対照群と比しPA添加群においてMCP-1分泌量は1.5倍へと増大したが(p<0.05)、AX処理により減少した(p<0.05)。またH2O2刺激によりMCP-1分泌量は1.4倍に増大したが(p<0.05)、AX処理で減少した(p<0.05)。(2) PAで増大したMCP-1の分泌はSP600125処理で減少した(p<0.01)。また、PAにより1.4倍へ増大したJNKのリン酸化(p<0.05)もAX処理により減少した(p<0.01)。 したがって、(1)パルミチン酸はMIN6細胞においてJNK経路の活性化を介しMCP-1分泌を増大させる。よって、糖尿病状態下ではβ細胞からのMCP-1分泌が増大することで膵ラ氏島へのマクロファージ動員が生じると考えられた。(2)Astaxanthinは内因性酸化ストレスの減弱によるJNK経路の不活化を介してMCP-1分泌を低下させ、膵保護作用を発揮する可能性が推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
膵β細胞に発現している多くのサイトカインの放出機構の解明と、糖尿病状態やそれにともなう慢性炎症の存在、あるいは内因性酸化ストレスの増大が、これらの放出に及ぼす影響を検討することを本研究の目的としている。今回は膵ラ氏島へのマクロファージの浸潤を促進するMCP-1に焦点を絞り、内因性酸化ストレス増大との関連を検討した。しかしながら、他の多くのサイトカインに関する検討が引き続き早急に必要である。
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今後の研究の推進方策 |
膵β細胞株(MIN6)を用いて得ることが出来た今回の成績が、糖尿病状態下あるいは2型糖尿病モデル動物からの単離膵ラ氏島を用いた検討においても再現されることを次に確認する。さらに今回の研究計画では、糖尿病状態下のmetabolic profileを改善することが知られているHSP72の役割を明らかにすることが主な目的であるため、41℃の温熱刺激による膵β細胞でのHSP72の増加を確認するとともに、この改善効果のメカニズムを多画的に検討していくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初より3年間にわたる研究計画であり、また予定通りの予算執行となったため、3年目の研究に使用するための助成額として計上している。
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次年度使用額の使用計画 |
MIN6細胞や単離膵ラ氏島に41℃の温熱刺激を与え、細胞内HPS72の発現増加を確認するとともに、その後高濃度グルコースもしくはパルミチン酸、ならびに両方の存在下に長時間培養のうえケモカインならびに炎症マーカーの発現増大に対する温熱刺激の予防効果を確認する。なかでもマクロファージの浸潤に重要な役割を果たすと考えられるMCP-1やVEGFの発現増大について、その細胞内での機構を明らかにする目的で、上記のRAW264との共培養下に、JNKやp38MAPKを含むMAPK経路の関与を、抗リン酸化アミノ酸抗体を用いたimmunoblotting法により検討すると同時に、温熱刺激による効果についても平行して検討する。
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