研究課題
2型糖尿病に認められるインスリン分泌不全の成因の1つとして、膵ラ氏島へのマクロファージの浸潤に伴う慢性的な炎症の惹起による膵β細胞機能不全が想定されている。そこでβ細胞株MIN6に飽和脂肪酸の0.3mMパルミチン酸(PA)を24時間にわたり負荷し、慢性炎症惹起の鍵因子であるMCP-1の分泌動態を検討したところ、内因性酸化ストレスの増大(p<0.01)とともにMCP-1分泌の増加を認めた(p<0.05)。次にMIN 6細胞を抗酸化物質である10μM Astaxanthin (Ax)で前処理したところ、PA負荷で増大したJNKのリン酸化(p<0.05)の有意な抑制(p<0.01)とともに、MIN 6細胞からのMCP-1分泌の減少を認めた(p<0.05)。さらに、細胞内小胞体ストレスのマーカであるCHOPの発現についても、PA負荷にて有意に増大(p<0.05)したものの、Ax前処理で明らかな減少を示した(p<0.05)。一方で、細胞防御系としてのオートファジー機構のマーカーであるlight chain (LC)3-ⅠのLC3-Ⅱへの変換について検討したところ、PA負荷により代償的な変換の増強を認めた(p<0.01)。またこの増強は、Ax前処理により明らかに解除された(p<0.01)。同様にp 62発現についても検討を加え、PA負荷による有意な増強(p<0.05)と、Ax前処置によるその抑制を認めている(p<0.05)。以上の結果より、(1)膵β細胞へのパルミチン酸の長時間曝露は、JNK経路の活性化を介してMCP-1分泌を増大させる。(2)AstaxanthinはJNKの不活化を介してMCP-1分泌を低下させるとともに、細胞内小胞体ストレスを減弱させる。(3)一方で、細胞防御系のオートファジー機構に対しては、パルミチン酸負荷への代償的な増強機転を、Astaxanthinは解除する方向に作用した。
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