研究課題/領域番号 |
25461367
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
三柴 裕子(村瀬裕子) 大阪医科大学, 医学部, 助教 (80377415)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | グルカゴン / 膵α細胞 / 1型糖尿病 / メタボローム解析 |
研究実績の概要 |
1. メタボローム解析による細胞内代謝の変化(コントロールαTC6細胞 VS. インスリン受容体ノックダウンαTC6(IRKD)細胞 ):メタボローム解析の結果、163種類の代謝産物が同定され、その中からコントロール細胞群とIRKD細胞群とで有意差を認めたものをピックアップし、代謝経路図を作成した。このうち、IRKD細胞はコントロール細胞に比し、タウリンの上昇、アミノ酸の取り込みの低下、ヌクレオチドの合成の低下、TCAサイクルの代謝物の低下という傾向が認められた。これらのうち、タウリン、アルギニン、グルタミン、ロイシンに着目し、細胞内での合成酵素の遺伝子発現と細胞内への取り込み能を検討した。 2. タウリン、アルギニン、グルタミン、ロイシンの合成酵素の遺伝子発現および取り込み能の検討:IRKD細胞では、タウリン合成酵素の発現と細胞内へのタウリンの取り込みが亢進していた。一方、IRKD細胞ではアルギニン合成酵素の発現と、アルギニンの取り込みは低下していた。その他の結果には有意差を認めなかった。これらの結果より、タウリンがグルカゴン分泌に影響を及ぼす可能性が考えられた。 3. タウリンに関する検討: 10 mMのタウリンを1.5 mM、5.6 mM、30 mMのグルコース濃度下でIRKD細胞とコントロール細胞に添加すると、IRKD細胞でのみ、タウリン存在下で高グルコース時のグルカゴン分泌が刺激された。インスリンレセプターノックダウン単離膵島でも同様の検討を行うと、タウリン存在下で高グルコース時のグルカゴン分泌が刺激された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の1年間で以下の研究項目を計画した。 メタボローム解析で特定した代謝物のin vitroにおけるグルカゴン分泌動態の検討:候補代謝物のうち、タウリン、アルギニン、グルタミン、ロイシンに関して、細胞内での合成酵素の遺伝子発現と細胞内への取り込み能を検討した。続いて、グルカゴン分泌を増強させる可能性があるタウリンに着目し、インスリンレセプターノックダウンα細胞株およびインスリンレセプターノックダウン単離膵島にタウリンを投与することによって高グルコース時のグルカゴン分泌が刺激されることを確認した。すなわち、インスリン作用が慢性的に欠乏した膵α細胞においてグルカゴンの奇異性分泌の一因として、細胞内タウリンの上昇が関与している可能性が示唆された。 ここまでの研究結果をまとめて、論文発表や学会発表などの研究発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
インスリンレセプターノックダウンα細胞で認められた奇異性グルカゴン分泌反応の原因となり得る候補代謝物に同定されたタウリンの糖代謝に対する作用について、in vivoの実験系で確認していく。すなわち、インスリン分泌能が枯渇したモデルマウス(STZ誘発性糖尿病モデルマウス)を作製し、比較的長期間タウリンを投与する実験を計画、実施していく予定である。研究計画の変更、問題点は特にない。
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