研究課題/領域番号 |
25461368
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
廣峰 義久 近畿大学, 医学部, 講師 (30460851)
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研究分担者 |
馬場谷 成 近畿大学, 医学部, 講師 (10449837)
池上 博司 近畿大学, 医学部, 教授 (20221062)
川畑 由美子 近畿大学, 医学部, 准教授 (80423185)
能宗 伸輔 近畿大学, 医学部, 講師 (90460849)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 1型糖尿病 / 臓器特異的自己免疫疾患 / 関連解析 / コンジェニックマウス |
研究実績の概要 |
円形脱毛症患者において、自己免疫性甲状腺疾患と自己免疫性1型糖尿病の合併頻度を調査し、さらに各種自己抗体およびHLAクラスⅡ領域のタイピングを行い、解析を行った。 円形脱毛症患者において、自己免疫性甲状腺疾患合併は10%、自己免疫性1型糖尿病合併は0%であった。円形脱毛症患者における自己免疫性甲状腺疾患の自己抗体は、TRAb、TPOAbいずれにおいても対照群と比較して高値を示した(TRAb: 42.7% vs 1.2%, P=1.6×10-46, TPO Ab: 29.1% vs 11.6%, P=1.7×10-6)。一方、円形脱毛症患者における膵島自己抗体については、対照群と比較して差を認めなかった。自己免疫性1型糖尿病に疾患抵抗性を示すHLAクラスⅡハプロタイプであるDRB1*15:01-DQB1*06:02の保有率は、TRAb陽性の円形脱毛症患者に対照群と比較して高率であり、自己免疫性1型糖尿病に疾患感受性を示すHLAクラスⅡハプロタイプであるDRB1*04:05-DQB1*04:01は円形脱毛症患者において自己免疫性1型糖尿病患者と比較して低率であった。 この結果は、1型糖尿病に関連するHLAクラスⅡ領域が、円形脱毛症と自己免疫性甲状腺疾患にも関連することを示しており、自己免疫疾患の臓器特異性に関する情報を得ることができた。 MaFa遺伝子のノックアウトマウスを1型糖尿病モデルマウスのNODマウスにスピードコンジュニックの手法を用いて置換したMafa-/-マウスを作出した。雌のMafa-/-マウスの糖尿病発症率は、NODマウスと比較して有意に抑制された(5.6% vs 95.6%, P<0.0001)。しかし膵島炎の進行は有意に促進された。 この結果は、1型糖尿病の候補遺伝子であるMaFa遺伝子の役割をin vivoにおいて確認したものであり、同遺伝子の役割が明確となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に、新たな1型糖尿病疾患感受性遺伝子の同定を研究計画していたが、MAFA遺伝子において、国内国外との多施設共同研究を行ない、アミノ酸変異を伴うMAFAGly346Cys多型が日本人において有意な関連を示すことを証明した。MAFA遺伝子とインスリン遺伝子との相互作用も示されたことから、MAFA遺伝子が1型糖尿病の臓器特異性に関与することが示された。 平成26年度には、1型糖尿病および他の自己免疫疾患(円形脱毛症、自己免疫性甲状腺疾患)の関連を詳細に解析することで、HLAクラスⅡと各自己免疫疾患の関わりがより明確となった。1型糖尿病と他の臓器特異的自己免疫疾患についての関わりが明確になったことが、1型糖尿病疾患感受性遺伝子における免疫調節機能の解明につながると考えられる。 また、予定していたコンジェニックマウスを用いた解析も完了し、1型糖尿病の候補遺伝子であるMaFa遺伝子の役割をin vivoにおいて確認したものであり、同遺伝子の役割が明確になった。 総合的にはおおむね順調に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
日本人の1型糖尿病患者において有意な関連を確認できたMaFa遺伝子については、コンジェニックマウスにおけるin vivoでの解析が完了した。今後はヒトにおける解析を勧めていくことになり、健常者・1型糖尿病患者・他の自己免疫疾患患者の末梢血サンプルを用いて、メタボローム解析・免疫機能解析・1型糖尿病のバイオマーカーの探索を行い、解析をすすめていく。 今回の研究でMaFa遺伝子が1型糖尿病疾患感受性遺伝子と同定されたが、さらに、新たな1型糖尿病疾患感受性遺伝子についての同定をすすめる。現在進行中の日本人GWAS(genome-wide association study)解析(当教室が解析チームリーダー)で関連が示唆されている遺伝子群と欧米のGWASで関連の証明された遺伝子群について、候補遺伝子とし解析を進める。
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