研究課題
基盤研究(C)
我々は2型糖尿病の発症・進展に関連する血清タンパク質を探索する目的で、isobaric tags for relative and absolute quantitation法による定量的プロテオーム解析に取り組んでいる。これまでの解析にて2型糖尿病モデルマウスであるKK-Ayマウスの血清にて発現変動する45タンパク質の同定に成功しており、このうち8種のタンパク質が前糖尿病期の耐糖能異常を呈する時期より持続して発現変動し続けることを見出した。本年度は、血清プロテオーム解析で見出した2型糖尿病関連タンパク質の一つであるserine protease inhibitor A3k (SERPINA3K)のヒトホモログであるSERPINA3について、2型糖尿病患者における血清濃度をELISA法にて測定し2型糖尿病との関連について検討した。測定対象は、当院人間ドックを受診した健常人群39名(58.9±7.7歳(mean±SD、以下同様), 男性(M)/女性(F)=21/11)、当院糖尿病内分泌代謝科に通院中で明らかな糖尿病合併症を有していない2型糖尿病患者群24名(69.7±10.1歳, M/F=14/10)とした。血清SERPINA3濃度は健常人群 175.2±26.3 μg/mL、2型糖尿病群 192.5±34.7 μg/mLと2型糖尿病患者群で有意な濃度上昇を認めた(p=0.038)。また、SERPINA3と空腹時血糖、HbA1cとの間に有意な正の相関が認められ、性、年齢、BMIにて補正した多重回帰分析の結果、空腹時血糖がSERPINA3の有意な規定因子として抽出された(β:0.314, p=0.029)。今後、より大規模な集団にてSERPINA3と2型糖尿病との関連を検証する必要があるものの、今回の解析にてSERPINA3が2型糖尿病発症初期の病態形成に関与することが示された。
2: おおむね順調に進展している
2型糖尿病モデルマウスを用いた定量的プロテオーム解析で見出した知見と同様に、血清SERPINA3濃度はヒト2型糖尿病患者群で高値を示した。今後、より大規模な集団にて検証する必要があるものの、SERPINA3が2型糖尿病発症初期の病態形成に関与する可能性を見出したため。
今後、より大規模な集団にてSERPINA3と2型糖尿病の関連を検証するとともに、in vitro, in vivoにて2型糖尿病の発症・進展におけるSERPINA3の分子機構を解明していきたい。
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