我々はこれまでの研究において肥満を伴う2型糖尿病モデルマウスであるKK-Ayマウスの血清プロテオーム解析を行い、若週齢より持続した濃度上昇を認めるタンパク質serine protease inhibitor A3 (SERPINA3)を同定した。一方、クローズドコロニーLong-Evans系ラットから確立されたLong-Evans Agouti (LEA)は高齢で尿糖を伴い糖尿病を発症するものの肥満を呈さないことが近年報告された(J Diabetes Res. 2013;2013:986462)。そこで非肥満性2型糖尿病モデルであるLEAラットを用い糖尿病の発症・進展と血清SERPINA3濃度との関連を検討した結果、KK-Ayマウス同様、LEAラット若週齢より血清SERPINA3の持続した濃度上昇が認められた。SERPINA3 mRNAの発現はLEAラット肝臓、腎臓、膵臓において対照マウスに比べて有意に高く、また、肝臓における発現は他臓器に比べて10~100倍程度高いことから、LEAラットにおける血清SERPINA3濃度上昇は恐らく肝臓におけるSERPINA3 mRNAの発現亢進を反映しているものと考えられた。 一方、SERPINA3と2型糖尿病との関連を検討する目的で、性別、年齢、BMIを一致させた非糖尿病対照群98名(HbA1c: 5.7±0.3%)、2型糖尿病患者68名(HbA1c: 7.1±1.2%)を対象に血清SERPINA3濃度を解析した。2型糖尿病患者群の血清SERPINA3濃度は非糖尿病対照群に比べて有意に高く、臨床指標を用いたステップワイズ多重回帰分析においてHbA1c、eGFR、HOMA-IRと有意に相関することを見出した。今回の解析にてSERPINA3が2型糖尿病の病態形成に関与することが想定された。
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