研究課題
基盤研究(C)
本年度は、cPLA2α阻害によるPPARγ活性化を介する抗動脈硬化作用発現の有無を見出す目的で、以下の検討を行った。①mouse cPLA2αの遺伝子配列を参考にしたsiRNA を作製し、そのsiRNAをマウス腹腔マクロファージに遺伝子導入、その後ルシフェラーゼ法を用いてPPARγ活性を測定したところ、コントロールに比しcPLA2α処理細胞では有意なPPARγ活性上昇を認めた。②上記導入細胞に対し、LPS刺激によるTNF-α、MCP-1発現、無刺激状態でのABCA1、ABCG1発現をmRNAレベルで確認したところ、コントロールに比しcPLA2α処理細胞ではTNF-α、MCP-1発現の有意な減少、ABCA1、ABCG1発現の有意な増加を認めた。③cPLA2α 欠損マウスの腹腔マクロファージを用い、上記①と同様な検討を行ったところ、コントロールに比しcPLA2α欠損マクロファージでは有意なPPARγ活性上昇を認めた。④さらに、上記②と同様のLPS刺激によるTNF-α、MCP-1発現、無刺激状態でのABCA1、ABCG1発現をmRNAレベルで確認したところ、コントロールに比しcPLA2α欠損マクロファージではTNF-α、MCP-1発現の有意な減少、ABCA1、ABCG1発現の有意な増加を認めた。以上より、cPLA2αの負の制御は、PPARγ活性を誘導し、その結果動脈硬化惹起性サイトカインの産生を抑制し、脱泡沫化タンパクを発現誘導することで、抗動脈硬化作用を発揮する可能性が考えられた。
2: おおむね順調に進展している
実験計画ではサイトカインの産生やABCA1/G1の産生増強効果はタンパクレベルでの発現検討も行う予定であったが、研究期間の関係で結果は得られていない。ただし、本研究の平成25年度の研究計画である、①cPLA2α分子発現阻害がPPARγの活性を上昇させるのか、②このcPLA2α分子発現阻害がマクロファージにおいて抗動脈硬化的作用を誘導するのか、という検討課題に対し、①については予想に反しない十分満足し得る結果が得られていること、②に関しては、mRNAレベルでの検討では、予想した結果が得られているため、当初の研究目的はおおむね順調に進展していると考える。
TNF-α、MCP-1、ABCA1、ABCG1のタンパクレベルでの発現に関しては、本年度まず第一に取り組む予定である。次に、cPLA2αの分子レベルでの発現抑制マウスを用いた検討として、cPLA2α欠損マウスをapoE欠損マウスと交配させ、cPLA2α欠損/apoE欠損マウスを作成。そのマウス(8週齢)に対し、高コレステロール食付加を6週間施行した後、上下行大動脈の組織を採取。その組織を用いて、①上下行大動脈の組織を採取し、大動脈を切開・展開したのちにホルマリン固定を行い、Oil-Red-O染色を行うことで粥状動脈硬化巣の進展度をマクロで観察する。②マウス大動脈洞部(大動脈弁上部)を採取ののち同組織の凍結切片を作成し、Oil-Red-O染色を行うことで大動脈洞部での粥状動脈硬化巣の進展度を観察する。③採取した大動脈組織及び作成した大動脈洞部の凍結切片に対し、TNF-α、MCP-1、ABCA1、ABCG1発現量をReal-time RT-PCR法及び免疫組織染色法にて解析する。またマクロファージ特異抗体(F4/80)での免疫染色を同時に行い、上記蛋白の発現局在の確認を行う。④採取した大動脈組織を用い、PPARγの転写活性をコマーシャルベースのELISAキットにて測定する。以上の検討を予定する。
本来本年度の実験計画ではサイトカインの産生やABCA1/G1の産生増強効果はタンパクレベルでの発現検討も行う予定であったが、研究期間の関係で実験の遂行が不可能であったため、実験に使用する予定の細胞培養液の費用分を繰り越す必要が生じたため、次年度使用額が生じた。この次年度使用額は、平成25年度に行えなかったタンパクレベルでの検討時の細胞培養液の購入に充てる予定である。
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