研究課題
アルツハイマー病への対応は、少子高齢化が急速に進む日本では特に大きな課題である。高脂血症や高インスリン血症等、動脈硬化症とアルツハイマー病には共通した危険因子の存在が示されており、アルツハイマー病の発症/進展へのコレステロールホメオスタシスの関与が推測されてきた。また、2011年の大規模な全ゲノム相関解析により、ABCA7遺伝子の一塩基多型と遅発性アルツハイマー病の連関が示されて以来、アルツハイマー病とABCトランスポーター、特にABCA7との関係が一気に注目されることとなった。本研究計画ではアルツハイマー病の“脂質代謝異常症”としての側面に着目し、動脈硬化研究で得たABCタンパク質の機能「HDL新生反応」ならびに「食作用」に関する知見と実験技術を利用して以下の成果を得た。初代培養ミクログリアの系を用い、アミロイドβ(Aβ)産生に直結する細胞膜表面のアミロイド前駆体タンパク質(APP)のエンドサイトーシスが、ABCA7欠損で亢進することを発見した。また、ABCA7 KOマウスとAβ産生亢進モデル(APPトランスジェニックマウス)の交配実験から、ABCA7欠損に伴ってアミロイド沈着が増加することも確認した。一方ABCA1ノックアウトマウス由来線維芽細胞を用いた実験から、ABCA1欠損ではコレステロールならびにその前駆体ラノステロールの細胞膜から小胞体への輸送低下が生じていることを見出し、ABCA1はHDL新生を介した細胞コレステロールの搬出のみならず、細胞膜から小胞体に向かうエンドサイトーシスも制御していることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
各種マウス、特にABCA1 KO, apoE KOマウスの繁殖と維持に問題が多く、常に予定通りの実験を実施できる体制はできていない。マウスの供給状況に対応した動物実験を優先しつつ、培養細胞実験と動物実験を平行して行っている。また分野の異なる共同研究者と、同一マウスから各々が必要な臓器を採取する等して効率を上げている。ABCA7 KOマウスとapoE KOマウスの交配によるdouble KOマウス作出に成功し、各種特性の解析を開始できた。
遺伝子改変マウス各種の繁殖と維持に困難が多いが、得られたマウスが有効に利用できるよう、供給状況を勘案して進める。初代培養細胞の凍結保存や株細胞の樹立等、使用個体数を減らすための操作も進めている。
遺伝子改変マウスの繁殖不良、他
交配条件変更等により系統断絶は免れたので、以降の個体数増加を確認して実験に供する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 5件、 査読あり 9件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件)
J Biol Chem
巻: 290 ページ: 23464-77
10.1074/jbc.M115.662668
巻: 290 ページ: 24152-65
10.1074/jbc.M115.655076
Brain Res.
巻: 1615 ページ: 1-11
10.1016/j.brainres.2015.04.008.
巻: 1613 ページ: 92-9
10.1016/j.brainres.2015.04.005.
Sci Rep.
巻: 5 ページ: 12059
10.1038/srep12059.
Neuroscience.
巻: 292 ページ: 159-69
10.1016/j.neuroscience.2015.02.034.
J Alzheimers Dis.
巻: 48 ページ: 149-62
10.3233/JAD-150341.
巻: 43 ページ: 1215-28
10.3233/JAD-141692.
巻: 43 ページ: 243-57
10.3233/JAD-140612.