研究課題
アルツハイマー病への対応は、少子高齢化が急速に進む日本では特に大きな課題である。高脂血症や高インスリン血症等、動脈硬化症とアルツハイマー病には共通の危険因子が示されており、アルツハイマー病の発症/進展へのコレステロールホメオスタシスの関与が推測されてきた。2011年の大規模な全ゲノム相関解析、2015年の常染色体優性遺伝のフレームシフト変異の報告は、ABCA7と晩発性アルツハイマー病の連関を強く示唆している。本研究計画ではアルツハイマー病の“脂質代謝異常症”としての側面に着目し、「HDL新生反応」ならびに「食作用」に関する知見と実験技術を利用して以下の成果を得た。初代培養ミクログリアの系を用い、アミロイドβ(Aβ)産生に直結する細胞膜表面のアミロイド前駆体タンパク質(APP)のエンドサイトーシスが、ABCA7欠損で亢進することを発見した。また、ABCA7 KOマウスとAβ産生亢進マウスの交配実験から、ABCA7欠損に伴ってアミロイド沈着が増加することも確認した。一方、ABCA1 KOマウス由来線維芽細胞を用いた実験から、ABCA1欠損ではコレステロールならびにその前駆体ラノステロールの細胞膜から小胞体への輸送低下が生じていることを見出し、ABCA1はHDL新生を介した細胞コレステロールの搬出のみならず、細胞膜から小胞体に向かうエンドサイトーシスも制御していることを明らかにした。さらに、蛍光pH指示薬標識化合物とイメージングサイトメーターによるリアルタイムでのファゴサイトーシス活性を経時的に観察できる系を構築し、これを用いて各種遺伝子改変マウスの腹腔膜マクロファージ細胞の比較を行い、ABCA7はヘテロ欠損であってもファゴサイトーシス活性低下をもたらすことが確認できた。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
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